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第394話 side景

「……」 あれ、反応がないな。聞こえなかったかな? 「修介?聞こえなかった?一人でしてるとこ」 「聞こえてるわっ!何言い出すかと思ったら……マジで馬鹿やないの?!」 修介は驚きのあまり目を見開いて反抗してくる。 「だって、何でもするって言ったでしょう?」 僕は勝ち誇った顔で修介を上から見下ろす。 あぁ、嬉しい。 修介のその行為をずっと見てみたいと思っていたから。 笑顔の僕とは裏腹に、修介は身体をフルフルと震わせて、思い切り顔を横に振り続けている。 「……むっ、無理っ!」 「は?」 「嫌や!それは……出来ない範囲やでっ!」 「いやいや、出来るから。だっていつも一人でしてるんでしょ?僕がいるかいないかの違いだけで、修介はいつも通りにするだけでいいんじゃない。簡単でしょ?」 修介がどうにか逃れようと僕の両腕を掴むから、僕も咄嗟に両腕をグッと掴んで離さない。 「だからっ、なんで景の前でせなあかんのっ?そんなん見ても何も得せぇへんで?!」 「でも損する事もないでしょ。僕ずっと気になってたんだ。修介がどんな風に僕を思ってしてくれているのか。自分で弄ってる姿、見たいなぁ。修介くん」 僕は眉を下げて微笑んで、滅多にしない甘えの表情を作り、瞳を潤ませた。 「そっ、そんな餌待ちの小犬みたいな切ない顔してもダメやで!てっきり、舐めてとか、そんなんやと思ってたんに……他のにして!」 「えー」 「逆を考えてみぃや!景っ、俺の前でしろって言われたら出来るんっ?」 そう問われて、僕が一人でしているところを修介が見ている、という状況を想像してみた。 うーん、もともと一人であまりしないから想像しにくいけれど…… 「修介が興奮してくれるんだったら、いくらでも」 「……ド変態!」 「ね?もう諦めて、大人しく言う事聞いてよ?僕の為にしてくれる?」 「……」 修介の僕の腕を掴む力が少し緩まってきた。 赤く染まった顔で、口をへの字に曲げながら僕をじっと見つめてくる。 多分もう、気持ちは固まったと思うけど、もう一押しする事にしてみる。 「僕の事、置いていったの誰だっけ?」 「!」 「その上、桜理とキスまでされちゃって、挙句の果てにはそれも秘密にされてて。僕の心はズタズタだな」 「ゆ、許してくれたんやろ?」 「そうだけど……修介がしてくれないって言うなら、桜理の事やっぱり半殺しくらいにはしとこうかな?」 「えっ!ちょっ、セコイでそんなん!」 「じゃあしてくれる?」 手首を掴んでより一層顔を寄せてお願いする。 修介は少しだけ涙目で唇を噛んでいたけど、横を向いて伏し目がちに小さく言った。 「――わか……った」 勝った! 僕は心の中でガッツポーズをして、修介の両手首をそのまま引っ張り上半身を起こさせる。 修介はシャツ一枚で、下はまだ履いたままの姿だから、これからどんな風にするのかワクワクした。 「見ても、笑わんといてな……ほんま、恥ずかしいんやで……」 その姿があまりにも綺麗で、高鳴る心臓の音がはっきりと自分で聞き取れた。 僕はぎゅっと修介を抱きしめて、修介の耳を甘噛みする。 「笑わないよ。ありがと。見せてくれる?」 「……ん」 僕らは瞳を閉じて、深い深いキスをした。

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