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第396話*
膝を立てて俯いた。
左手でTシャツを持って鼻と口に生地をあてて、景の香りをもう一度嗅いでみる。
景が同じ部屋にいるのに、なんでこんな事してるんだろ。
冷静にそう考えてしまうと、このベッドからすぐに降りてしまいたくなった。
でも、触っていなくてもわかる。
足の間が先程から熱を帯びて勃ち上がっているに違いなかった。
そう認識すると、余計に変な気分になってきてしまう。
正直、早く触りたい。
触って欲望を発散させたいけど、景に最後の確認を取ってみた。
「……ホンマに、しなきゃ駄目やの?」
「何言ってんの今さら」
だよね……。
俺はもう覚悟を決めて、シーツの中へモゾモゾと手を伸ばして、そこを恐る恐る握った。
少し触っただけなのに、神経に直接触れられたように、そこからジワジワと全身に快感が押し寄せる。
羞恥もあって顔が歪んだ。
少しだけ、手に動きを加えてみる。
「触ってるの?それ」
「えっ!?」
何か間違ってたかと思い、慌ててそこから手を引っ込める。
景は何を思ったのか、急に立ち上がってベッドに片膝を乗せて、俺の下半身に掛けているシーツを掴んで引っ張ろうとするから、こちらも負けじとシーツを引っ張った。
「これ邪魔なんだけどなぁ」
「これは取らないでっ!お願いやからっ!」
「だって、肝心なところが見えないじゃない」
「ま、マジで無理……」
「駄目」
「み、見えない方が、いやらしいやんか!想像力掻き立てられてっ!」
お願い……と涙目で懇願すると、景は折れてくれたようで、一息ついてまた椅子に座り直した。
「うーん。しょうがないなぁ」
「……」
良かった。
全部さらけ出して見せるなんて平気なわけない。
そもそもこんなの人に見せるなんて事普通はあり得ないんだから。
シーツの中で身体を小さく丸めて膝同士をくっつけて、またその猛った部分に手を伸ばした。
Tシャツを左手で持ち、鼻と口に充てながらこっそり視線を滑らせると、不敵な笑みを浮かべる彼と目があってしまって、すぐに逸らした。
手を少しずつ動かすと、先程のように甘い疼きがそこから全身に広がっていくから、眉が下がる。
最初はぎこちなく始めたそれだったけれど、ジワジワと感じる快感に、手が自然といつもしているみたいに動き出す。
「はぁ……」
鼻と口が塞がって、息苦しい。
でも、離すわけにはいかない。
こんな情けない顔、景に見られたら恥ずかしくて死にそう。
目を閉じると、自分の部屋のソファーベッドにいるような錯覚に陥る。
いつも景に会いたくても会えなくて、抱いて欲しいのに側にいなくて、寂しくて、自分で慰めてるんだ。
でも此処は景の部屋で、一人じゃない。
横では、彼がじっと俺の事を穴があきそうな程見つめているはずだ。
駄目だって分かってるのに、どんどんと気持ちが高ぶってくる。
むず痒くて片足を伸ばしたりすると、シーツと足の擦れる音がいやらしく耳を刺激して、ますますブレーキが効かなくなった。
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