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第423話
ちゃんと服を着終えた後、景の中心に手を伸ばしたけれど、その手を途中で取られてそこに到達することは出来なかった。
「なんで?俺も」
「僕はいい。これ以上すると、本当に止まらなくなっちゃうよ」
「じゃあ、今日の夜、俺ん家で……」
「うーん、それもいいけど、たまにはホテルとか行ってみる?修介、明日も大丈夫でしょ?」
「えっ! だ、大丈夫やけど、景はそういう場所に行きたいん?」
「修介の部屋だと、苦情が来ちゃいそうだからね。男の泣き声が絶え間なく聞こえますって」
それってどんな激しいセックスをするおつもりでしょうか……
でもそういう場所に行くのは初めてだから、ちょっとだけ楽しみでもある。
「わ、分かった。じゃあ夜な」
「うん。それにしても、母さんと何話したの。凄く気になるんだけど」
「え?……景は生意気に育ったねって」
「え? 何それ」
ベッドの上で向き合って会話していたけど、景の手がべたついているのに気付いてしまい、赤くなりながら階段を下りて洗面所に向かった。
その時にリビングのドアのすりガラスから中を覗いたけど、お父様は今度は囲碁の本を集中した様子で読んでいて、お母様はキッチンで忙しなく動き回っていたから、ホッと一息吐いた。
「気付かれてなくて良かったぁ」
洗面所で石鹸を付けて一緒に手を洗った。
「気付いてないフリをしてるだけかもよ」
景は意地悪く言い、泡を水で流してからタオルをこちらに差し出した。
受け取って手を拭きながら、俺はムッと唇を尖らせる。
「まさか景の実家で抜かれるとは思ってなかった」
「興奮した?」
「し、してへん」
「じゃあこれは?」
景は壁に手をつき背中を丸めて俺の顎を持ち上げ、唇を親指で撫でた。
今度はすぐそこに景の両親がいるのに、どんどんその顔が降りてきて、問答無用でさっきみたいな激しいキスをされた。
両手で体を押すけどやっぱりビクともしなくて、もういいや、と諦めの気持ちが入ってしまい、力を抜いてなされるがままになっていた。
離れていったのが分かったから目を開けた。
そこにはやっぱり余裕の表情をした景がいて、俺はまた唇を尖らせた。
「……興奮した」
キャン、といきなり耳に入ってきた鳴き声にドキっと心臓が跳ねる。
二人で足元を見ると、そこにはさっきいなかったはずのモコの姿があった。
「モコ、絶対にシーだからね」
念を押す景に、分かってるのか分かってないのか、モコはパタパタと走り回っている。
景がしゃがんで体を撫でてあげていると、丁度よくリビングのドアが開いた。
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