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第424話

「そろそろ夕飯できるってー。こっちで座って待ってたら?修介くんはお酒飲めるの?」 お父様の言葉に、チラッと景を見る。 俺は飲めるけど、景は運転だから飲めない。 俺だけ飲んでいいものかと困っていたら、何も言っていないのに景は「いいよ」とだけ言ってまたモコと遊び始めた。 はい、と俺は頷くと、お父様は嬉しそうに微笑んだ。 みんなでリビングに入って、お母様の手料理をテーブルの上に並べた。 机に乗り切らないほどの品数をこの短時間で作ってしまうだなんて、本当に料理上手なんだなぁと感心した。 ポキ丼は俺の分だけサーモンが抜かれていて、たれで合わさったマグロとイカとアボガドがご飯の上に乗っていて、見た目が色鮮やかで艶があり、お腹はいっぱいだと思っていたけど食欲がわいてきた。 景以外のみんなはビールをグラスに注ぎ、景はノンアルコールビールで乾杯をした。 「本当に、すごく美味しいです」 もっと気の利いたコメントをしたいのに、そんな感想しかいえない自分に呆れながらもそう口にすると、お母様は半分くらい減ったグラスにビールを注いでくれた。 「あら。そんな事言ってくれて嬉しいわ。景はいつもダメ出しばかりするから」 「ちゃんと言ってあげた方が貴女の為になるかと思って。早速だけど、この煮つけちょっと甘すぎる」 「ほら。もう、無視無視」 景はその後もちょくちょくダメだしをしていたけど、お母様は聞いていないようでしっかりと聞いていた。 お父様はそれを見守るように、あまり口出しはしない。 藤澤家ってこうなんだ。いい家族だなぁ。 今日は、ここに来れて良かった。 心の底からそう思えて、じんわりと胸があったかくなった。 デザートにお母様が手作りしたというタルトタタンをご馳走になった。 もうこれ以上は入らないと思っていたけど、出されたアールグレイの紅茶と一緒に食べるととても美味しくて、お店に出せそうなくらいのクオリティの高さに圧倒されながらあっという間に平らげたのだった。

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