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第426話

「今度は、修介の家に行きたいな」 景は紫煙を吐き出してから徐にそう言うから、ゲホン、とわざと咳払いをした。 「景、行くのは別にええんやけど、うちの親には付き合ってるって事は内緒にせぇへん?」 「え、なんで」 途端に眉を顰められる。 きっと嘘を吐くのは嫌なんだろう。 俺は「違くて」と否定した。 「うちのオカン、アホなんよ」 突拍子もない発言に、景は吹き出した。 「いや、ホンマなんよ。ちょっと天然っていうか抜けてるっていうか……だから付き合うてるだなんて言うたら、驚きの前に、調子に乗って周りにペラペラ喋りまくってしまうかもしれん」 「あぁ……」 俺の顔をジッと見てくる景は、何だか納得のいったような顔をしていた。 この息子ありきの母親なのだから、アホなのはしょうがないとでも思ってるんだろうか。 でもそれは本当なのだ。 俺の親も、景の家とはまた別の意味で変わっているのだ。 「だから、とりあえずは友達で通してくれんかなぁ?」 「しょうがないね」 景は笑いながら煙草の火を携帯灰皿でもみ消すと、車のナビに手を伸ばして弄りはじめた。 なんとなく打ち込まれる文字を見ていると、カタカナで最後に「ホテル」と出たから目を見開いた。 検索を押すと、ルート案内開始の文字が出た。 ここから三十分程行った場所にあるらしい。 「調べたん?」 「うん、さっきずっと調べてた。周りにバレなさそうで、人にも会わなさそうで、修介が好きそうなホテル」 さっきスマホをこれでもかというほど熱心に見つめていたのはこれだったのか。 そして俺の好きそうなホテルってどういう事? いろいろとツッコミどころ満載だけど、俺は敢えて何も言わずに、これからその場所でするであろう情事に少々胸に期待を膨らませながらシートベルトを締めた。 景も同じようにベルトを引っ張りながらこちらに顔を寄せる。 「じゃあ行こうか」 「うん」 今日何回目かわからないキスを飽きもせずにした。 リップ音を鳴らして離れていってから目を開けると、直ぐに「あ」と声が漏れた。 視線の先にはモコがいた。 大きな窓のカーテンの隙間から、丸い目を輝かせているかのようにこちらをジッと見て舌を出していた。 「めっちゃ見てるやん……」 「モコにはどうしてもバレちゃうんだね」 二人でモコに手を振ってみるけど、モコは動かずにじっとこちらを見続けている。 俺たちはまた笑って、もう一度だけキスをした。 二人だけの秘密だと思っていたキスは、やっぱり最後までモコだけが見ていた。 番外編 モコだけが見ていた END☆ →→ラブホテルへGO!

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