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第452話
「でもホンマに良かったな。仲良うやってるみたいで。一緒に住むだなんて、藤澤さんももう覚悟決めたんかな」
「覚悟?」
「うん。修介と、これからの長い長ーい人生を共に生きる覚悟」
視線を遠くに移すと、景は若い女の子三人に話しかけられていた。
どうやらもうバレてしまったらしい。
瞬くんもそんな様子を見て、「あーあ」と笑った。
「あんなんしょっちゅうやろ。修介はあんなん見る度に、嫉妬したりモヤモヤしたりするんやで。大丈夫なん?」
景はその女の子たちと握手を交わしていた。
あんなシーンは何回も見ているから、前よりは心揺さぶられる事は無くなったけど、なんにも感じないかと言ったら嘘になる。
本音を言ってしまえば、俺だけの景であってほしいし、誰にでもいい顔はして欲しくない。
けれど、何があろうとも乗り越えると決めたのは俺だ。
ずっと一緒にいる。
景と共にいれる事を感謝しながら、これからを過ごしていきたい。
「大丈夫。俺達、ちゃんとずっと一緒にいるって決めたんよ」
そう言うと、瞬くんは顔を背けて何故かくくく、と笑いを堪えていた。
真剣に言ったのに。
でも、ちょっと恥ずかしいセリフだったかも。
瞬くんは仕切り直して笑う。
「そうか。それなら安心やな。もし喧嘩してどうしようも無くなったら俺ん所電話してこいよ。慰めてやるから」
「それ、なんか前も言われたなぁ。ありがとう瞬くん」
そろそろ電車に乗らなくてはならない時間だった。
景も同じ事を考えたようで、こちらに向かって歩いてくる。
「修介、そろそろ行こう。僕、周りにジロジロ見られるようになってきた」
「あ、アカンな。囲まれて足止めされたら新幹線に乗れなくなってまう。じゃあ瞬くん、またな」
「おー。気を付けて帰れよ。藤澤さんも、修介とお幸せに」
「うん、ありがと」
手を振り、小走りで駅へ向かう。
階段を登ろうとする時に振り返ると、瞬くんはまださっきの場所にいて、もう一度こちらに手を振ってくれた。
新幹線に乗り込んだ後、瞬くんと何を話していたのか聞かれたから、ちょっと恥ずかしかったけどちゃんと伝えた。
景は脱いだコートに隠しながら、こっそり俺の手を握る。
「共に生きる覚悟はあるよ。じゃなきゃ、修介の両親に会う事は無かったよ」
感激で、そのままキスをしてしまいたかったけどなんとか耐えた。
目を閉じたらほどよい揺れが心地よくなってきて、眠ってしまった。
東京駅に着いて景とお別れをし、ようやくアパートが見えてきた頃には足が棒のようになっていた。
二階の自分の部屋のポストを見ると、白い封筒が入っている。
すぐにそれを手に取り、中に入った書類を取り出した。そして、一枚の紙を開いてすぐに目に飛び込んできた文字を見て、やった!と声に出し、すぐに景に電話をかけた。
それは、採用内定通知書だった。
番外編 ニャム太は見ていなかった ☆END☆
→→最後の最後におまけ!
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