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第55話
全校集会のとき、彼はいつも前を向いていた。
長い校長の話に周囲がだらける中、彼は初めて見たときと同じように、綺麗な姿勢のまま前を向いていた。
だから、俺が表彰されているときも、しっかり前を向いて、俺を見ていた。
見ていた、と思っていた。
それが……
まさか……
まさか、彼の瞳が全く俺を写していなかったとか。
自分の中では小さな充足感と思っていたが、全然"小さな"じゃなかった。
そうじゃなかったら…。
こんなにショックを受けて、彼を恨めしいと思ったりしないだろう。
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