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第56話

「寺島?」 一向に足を動かそうとしない俺に、彼が近づいてきた。 そして、じっと俺のことを見る。 じっと見てはいるが…… 今、この瞳は、本当に俺を見ているのだろうか? どうすれば、ちゃんと見てくれる? どうすれば、俺だけを見てくれる? どうすれば、どうすれば、どうすれば……… 「寺島!」 彼に肩を揺すられて、俺は我に帰った。

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