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第73話

試合は予定通り、俺の優勝で終わった。 オール一本で、隙のない試合だった。 我ながら、綺麗に勝てたと思う。 そして現在。 閉会式が終わり、いつものようにファンクラブの女の子達に囲まれている。 「優勝おめでとうございます!」 「おめでとうございます!コレ、食べてください!」 「これも使ってください!」 俺も、いつものように、"ありがとう"と言いながら笑顔で受け取る。 が、内心は笑顔ではない。 早く彼を探したい。 今日に限ってなかなか解放してくれないファンクラブの女の子達。 苛立ちが顔に出そうだ。 何とか自分の持ち物の場所にたどり着き、スマホを確認する。 「あ!」 俺は、スマホだけ持って駆け出した。 「オイ、寺島!?」 「寺島、どうした?!」 他の部員が、突然走り出した俺に声をかけてきたが、無視して施設の出入口に向かう。 人の波をかき分けながら、再度スマホを見る。 {お疲れ様でした いつもの彼の塩ラ〇ン。 でも今の俺には、はちみつのように甘い文字に見えた。

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