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第75話

俺の声に、彼がこちらの方を向く。 何故か俺の目には、彼の動きがスローモーションで見えた。 綺麗な横顔が、だんだんと正面からの顔になり、純粋な双眼が、ひときわ大きくなり俺を捉える。 そして、 「寺島!?」 あの艶やかな唇から、驚きの声で俺の名前を発した。 ああ、愛しい。 堪らず彼に駆け寄る。 俺は、そのまま抱きしめたい衝動を何とか抑え、 「雅実、来てたんなら連絡くれよ」 いつもの笑顔で彼を見つめた。

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