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第85話

黄金色の西陽が、長い廊下いっぱいに広がっている。 どこまでも続く黄金色。 眩しすぎて目を細める。 こうやって、隣りに誰かがいて、ゆっくり歩いて帰るは久しぶりだ。 何だか懐かしい。 「俺、保育園からの幼馴染みがいてさ。よく一緒に帰ってたんだよな」 ふとアイツの顔が浮かんだ。 「幼馴染み」 「ああ。家が隣同士だから、登下校はいつも一緒だった」 そう、彼女が出来るまでは。 「ホント、くだらない事ばっかしてたなぁー……」 アイツの珍事の数々を思い出して、つい笑った。 そして思った。 こうやって、躊躇(ためら)うこともなく、アイツのことがスラッと口から出てくるなんて…。 俺の中で、"アイツ"は、懐かしい思い出になったんだ。 あんなに苦しくて、どうしようもできなくて、気が滅入りそうだったのに。 今ならアイツと、普通に笑って話せる気がする。

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