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第87話

横から視線を感じるなと思い、彼の方を見ると、やはり俺を見ていた。 「どした?」 「……いや」 首を軽く左右に振り、前を向いた彼。 「寺島が…優しい顔、だったから」 「え?」 綺麗な横顔の、彼の口角が、少し上がる。 「その幼馴染、良い子なんだな」 「んーどうだろなー?アイツ、ホント阿呆だからさ毎回毎回ー……」 それから、校門をくぐるまでの数分間。 俺の思い出話をした。 本当は、彼の事をもっと聞きたかったのに。 でも、興味深く俺の話を聞いてくれる彼を見て、俺の心にも優しく西陽が差し込んだ。 ただ、黄昏(たそがれ)に染まる彼の横顔は、確かに笑っているのに、何故か、寂しそうに見えた。

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