89 / 140
第89話
――コン、コン、コン――
――ガラガラガラ……――
軽くノックしてゆっくりと保健室の扉を開け中に入る。
「失礼します」
「…失礼、します」
扉には『養護教諭不在』のプレートが出されていたが、保健室利用者がいるかもしれないので、小声ではあるが一応挨拶をした。
ベットの方を見るとカーテンが引かれていた。
やはり利用者がいたようだ。
俺がベットの方に気を取られていると、彼は中央に置かれたテーブルに近づこうとした。
必然的に俺の右手から彼の左手が離れそうになる。
既 のところで、俺は彼の手を再び握った。
軽く引っ張られた形となった彼が、俺の方を見る。
「寺島、だいじょ…」
「ダメだ」
俺は彼の左手を握ったまま、彼がしようとしたようにテーブルに向かった。
ともだちにシェアしよう!