95 / 140

第95話

折られた淡い期待が、ドロリと俺を侵食していく。 俺は雅人じゃない。 「……じゃない」 俺は雅人じゃない。 「ん?」 俺は雅人じゃない。 「俺は、雅人じゃない」 ゆらりと、身体が彼の方に動いていた。 触れた彼の唇は甘くたわやかで、 「雅人じゃないから…」 捉えた彼の鳶色の瞳は、 「俺は、雅実に、こういうことする」 酷く怯えていた。

ともだちにシェアしよう!