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第95話
折られた淡い期待が、ドロリと俺を侵食していく。
俺は雅人じゃない。
「……じゃない」
俺は雅人じゃない。
「ん?」
俺は雅人じゃない。
「俺は、雅人じゃない」
ゆらりと、身体が彼の方に動いていた。
触れた彼の唇は甘くたわやかで、
「雅人じゃないから…」
捉えた彼の鳶色の瞳は、
「俺は、雅実に、こういうことする」
酷く怯えていた。
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