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第97話
あれから1週間。
どうやって過ごしたか、あまり覚えていない。
ただ、彼が一生懸命教えてくれたから、期末テストは頑張った。
初めから分かっていたことだ、彼の一番は。
今までもあったことだ、こんなことは。
でもそれが、ずっと、これからもずっと、続くと思ったら。
あのとき、男からキスをされたと言うのに、完璧な造形の彼の顔はそのままだった。
ただ、瞳だけ、鳶色のあの瞳だけは、違った。
傷つけた、彼を。
俺の、身勝手な気持ちと行動で。
優しい彼の対応に、俺は知らず知らずのうちに驕 っていたのだ。
彼ならこの気持ちを受け入れてくれるんじゃないかと。
『恋は盲目』とは正にだ。
普通に考えれば、彼が男の俺を、恋愛的意味で、好きになるなんてない。
なのに、何をトチ狂ったのか、俺の頭は。
一瞬でも、彼が俺に好意を、恋愛感情を抱いているなんて思ってしまったのだ。
そして、彼の気持ちがそうじゃないと分かると、そのどうしようもない感情を、彼の気持ちも考えず、キスという形でぶつけた。
彼のことは好きだ。
崩れることなく積もってゆくこの思いも、いつか、時を見て、伝えるつもりだった。
それが……。
俺は、大切な彼への気持ちは伝えられず、ただただ自分の我儘を押し付けただけだった。
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