99 / 140

第99話

「広瀬。コレ、雅人に渡してきてくれるか」 彼の机の上に置かれてあった、プリントを広瀬に渡す。 「え?オレ?」 広瀬は自分を指差し、俺の顔と手元のプリントを交互に見た。 「ああ。俺は部活があるから」 「う、うん。わかった」 不思議そうな顔の広瀬だったが、素直にプリントを受け取った。 「じゃあ、頼んだ」 「ほーい!ばいばーい」 軽く手を上げ、別れの挨拶をすれば、広瀬もブンブンと手を振って返した。 部室に向かう足取りは、重い。 朝のSHRで、彼の休みが伝えられた。 熱を出したとのことだった。 彼が休んだのは、間違いなく俺のせいだろう。 熱が出たと言うのも、もしかしたら、俺に会いたくない為のウソかもしれない。 彼から避けられて当然のことをしたのだから。 また、鳶色の瞳が浮かぶ。 俺は、慌てて首を振り、それをかき消す。 ため息をついて前を向けば、まだ白く明るい廊下が広がっていた。

ともだちにシェアしよう!