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第99話
「広瀬。コレ、雅人に渡してきてくれるか」
彼の机の上に置かれてあった、プリントを広瀬に渡す。
「え?オレ?」
広瀬は自分を指差し、俺の顔と手元のプリントを交互に見た。
「ああ。俺は部活があるから」
「う、うん。わかった」
不思議そうな顔の広瀬だったが、素直にプリントを受け取った。
「じゃあ、頼んだ」
「ほーい!ばいばーい」
軽く手を上げ、別れの挨拶をすれば、広瀬もブンブンと手を振って返した。
部室に向かう足取りは、重い。
朝のSHRで、彼の休みが伝えられた。
熱を出したとのことだった。
彼が休んだのは、間違いなく俺のせいだろう。
熱が出たと言うのも、もしかしたら、俺に会いたくない為のウソかもしれない。
彼から避けられて当然のことをしたのだから。
また、鳶色の瞳が浮かぶ。
俺は、慌てて首を振り、それをかき消す。
ため息をついて前を向けば、まだ白く明るい廊下が広がっていた。
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