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第102話

いつもより足早に前を歩く彼。 一週間前までは、並んで歩いていたのに。 徐々に雑音は消え、彼と俺の足音だけとなる。 小さく深呼吸して、彼の足元から目線をあげる。 そこには、何度も見た背中。 熱い日差しとともに、白昼夢に襲われる。 ドクドクとけたたましい音が体中に響く。 もし今、彼を呼んだら。 悪夢に締め付けられる脳内。 今にも発狂しそうな自分がいる。 ――ガチャガチャ―― いつの間にか資料室の前に着いていて、彼が鍵を開けている。 ――ガラガラ……―― 恐る恐る、彼に続いて資料室に入れば、本特有の匂いが充満していた。

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