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第107話
「て、寺島……俺の、話を聞いてくれ」
鳶色の瞳が動く。
彼は深呼吸を数回すると、
「あ、あの日…」
震えた声で話しだした。
「寺島に、き、キスされた日から、悩んだ……」
少し俯いた彼。
「悩んで悩んで悩んで悩んで……熱が出るくらい悩んだ」
思いつめた彼が頭に浮かぶ。
「…うん、ごめん」
申し訳ないと思う一方で、彼が俺のことを真剣に考えてくれたと思うと、より一層彼のことが好きになった。
ジッと彼を見ると、逡巡しているように見えた。
「それで…思ったんだ……」
そんな彼が喋りだしたので、思わずゴクリと唾を飲む。
「俺は、寺島と友達になりたくないって……」
「……」
彼に対して、何か言いたいのだが、言葉が出ない。
「……」
彼も口を結んでいる。
「……そ、っか」
そうだよな。
やっと出た言葉が、なんとも情けない声で、つい"ハハッ"と自嘲した。
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