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第116話
俺のことを許さないと言いながらも、プイッとよそを向いて俺達の気持ちを尊重してくれる雅人。
きっと複雑なんだろうな。
雅人も、彼と一緒に悩んでくれたんだろう。
なにせ、"もうひとりの彼"なんだから。
そう思うと、自然と感謝の言葉が浮かぶ。
「…ありがとう、雅人」
"俺を好き"という彼を受け入れてくれて。
"彼を好き"という俺を認めてくれて。
その後、誤魔化すようにキャンキャン言う雅人につい笑ってしまい、そして、雅人の横にいた小森さんが、目が笑ってない笑顔で、
「寺島君、私のこと忘れてるみたいだけど、もし雅実君を悲しませるようなことしたら、私も、アナタのこと、許さないからネ?」
と、俺に忠告してきたときには、底知れぬ恐怖を感じ、思わずたじろいだ。
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