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お家でランデブー 第5話(R-15)

手を繋ぎ、指を絡ませたまま、2階の部屋へ向かう。 繋いだ手が、絡まる指が、熱い。 あの保健室で思っていたことが、今現実のものとなっていることに、俺は高揚していた。 自分の部屋の前に着いたが、彼の手は離さない。 彼に気づかれないように深呼吸をして、ドアノブに手をかける。 ――ガチャ、ギーーー……―― 無言のまま彼の手を引き、部屋に招き入れる。 ――…………バタン―― 後ろで聞こえたドアの閉まる音を合図に、彼の方を向く。 甘く濡れた鳶色の瞳と目が合う。 その瞳が、ゆっくりと目線を下げて、止まった。 彼が、俺の唇を見ている。 そう思ったのも束の間。 瞳を閉じながら、彼の美しい顔が近づき、 ――ちゅ―― 俺の唇に触れた。 彼の顔はすぐに離れていき、名残惜しさから彼の唇に目がいく。 すると、その唇がゆっくりと動いた。 「寺島……」 甘い声が、俺の名前を呼ぶ。 彼の唇から目線を上げると、熱を帯びた鳶色の瞳が、俺を見ていた。 さっきまでの初心(うぶ)な彼は何処へ行ったのか。 俺は心の中でため息をついた。 彼はマスティマだ。 俺を惑わし、理性のない人間へと誘い込む。 再び彼の形の良い唇を見ると、薄く開いたまま。 まさに、魅惑の扉が俺を誘うように開いてる。 ずっと待ち望んでいたその誘惑に、どうして抗えることができるだろうか。 「寺島……」 誘われるまま、彼の唇に自分の唇を重ねる。 柔らかな彼の唇をもっと味わいたくて、唇を少し離し、舌先で彼の唇を舐める上げる。 ぺろりぺろりと舐めていると、彼が俺の下唇を甘嚙みする。 俺もお返しに、彼の上唇を甘嚙みする。 彼の唇を存分に味わいながら、彼を抱きしめるため、絡めた指をほどき、繋いだ手を離した。 が、すぐに彼の手が俺の指を握る。 そして、じゃれていた唇をゆっくりと離し、 「……握って」 濡れた鳶色の瞳で見つめながら、指を絡ませてきた。 あまりない彼のお願いに、少し戸惑いながらおずおずと指を絡める。 それに満足したのか、彼は子どものような笑みを浮かべ、キスを再開させる。 ホントに、彼は蠱惑(こわく)的だ。 再開したキスは、彼が見せた笑みとは全く違い、どろりとした欲望をかきたてるものだった。 かぷりと俺の唇を食べるようにキスすると、唇の隙間に舌を差し込み、俺の口を開けようとする。 彼からの大胆なキスに驚きながらも、彼のなすがままになるのも悪くないなと思い、口を開ける。 すぐさま彼の舌が侵入し、俺の舌を探し当てる。 彼の舌は器用に動き、俺の舌を絡めとる。 時折、唾液の分泌を促すように、舌先が口内を刺激する。 どこでこんなキスを覚えたんだ? 絶妙な彼の舌の動きに、歴代の彼の恋人達に嫉妬する。 俺はその嫉妬から、絡まる舌を引っ込めようとした。 しかし、彼はそれを許さず、顔の角度を変え、追うように舌を深める。 と同時に、絡めていた指を立て、俺の手の甲を引っ搔く。 "なんで引っ込める(逃げる)んだ!"と言わんばかりに。 いつもの彼からは想像できない執着。 俺だけじゃない、彼も俺を求めている。 見知らぬ元恋人達への嫉妬は一瞬にして消え去り、引っ掻かれた痛みも甘い痛みに変わる。 ――くちゅり、ちゅ……―― 甘く艶めいた音が響く中、指絡ませ、舌を絡ませ、俺は彼を引き寄せる。 そして、ゆっくりと俺のベットに座らせる。 "キスより先"をする為に。

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