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チラリと?!夏祭り 第1話

夕方になっても残暑が厳しく、蝉の鳴き声が、それに拍車をかける。 リビングや自室にはエアコンがあるが、さすがの洗面所は扇風機のみ。 その扇風機も、 「あー、髪型きまんねー…」 髪のセットのため止めている。 今日は、夏祭り。 やっと、やっと雅実に会える。 結局、終業式の後の、あの甘い時間から、雅実に会えていない。 俺は部活と夏期講習、雅実はずっと通っている塾に加え英語の短期プログラムを受けている。 お互い、忙しい夏休みのスケジュールで、なかなか都合がつかなかった。 はっきり言って、雅実不足だっ!! 雅実と恋人同士になって、多少電話やラ◯ンも増えたが、元が淡白だったから、それじゃあ全然足りない!! だから、久しぶりに会える雅実(恋人)に、しかも夏祭りというイベントに、格好良くきめたいと思うのは、至極当たり前だ思う。 「アキちゃーん!!」 リビングの方から、妹・アリサの声がする。 アリサも、夏祭りに行くと言っていた。 母さんに新しい浴衣を仕立ててもらったと言っていたから、たぶんお披露目して『可愛い』と言ってもらいたいのだろう。 が、俺はそれどころではない。 とりあえず、髪型がきまらないので無視。 「アーキーちゃーん!!」 あー、まじ何でここがハネるかなー…。 「アーキーちゃーん!!」 いっそ、もう一回髪濡らすか? 「アーキーラーーーー!!」 シスコンの兄・(あらた)の声までしだしたので、これはリビングに行かないと、面倒くさいことになる。 「…ったく」 手につけた整髪料を洗い流し、渋々リビングへ向かった。

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