128 / 140

チラリと?!夏祭り 第2話

「あぁー生きかえるー」 薄っすらかいていた汗がスーッと引く。 リビングはエアコンが効いており、洗面所に比べ、かなり冷えていた。 「晶、お前、アリサが何回も呼んでんのに、何でこねーんだよ」 ソファに座っている新が、首を後ろに回し俺を見る。 思っていた通り、新が面倒い状態だ。 「俺も夏祭りに行くから、用意してたんだよ」 「男がそんな用意に時間かかるか!」 "デートの度に洗面所を30分以上占領するお前が言うか"と思いつつ、面倒いので"ハイハイ"と軽くあしらう。 「で、アリサは?」 リビングを見渡すが、俺を呼んだ張本人の姿が見えない。 「アリサは…」 キモい笑顔を浮かべ、キッチンに目を向けた新につられ、俺もキッチンの方を見た。 そこには、アリサではなく母さんがいた。 目が合うと、呆れ笑いでチラリと後ろに目をやる母さん。 すると、 「じゃじゃーん!!」 母さんの後ろから、浴衣を着たアリサが飛び出した。 「アキちゃん、どおどお??」 ぴょこぴょこ小走りで俺の前にきたアリサは、目の前でくるりと一回転。 ニコニコしながら俺を見上げる。 「可愛いよぉー、アリサー!」 「アラタにぃには聞いてない」 デレデレの新には目を向けないアリサ。 どうも、新とアリサの兄妹愛は、新の一方通行のようだ。 逆に、 「ね、どおどお?似合う??」 年が近いせいか(それでも4つ離れているが)、俺に懐いているアリサ。 「んー浴衣似合うけど…、コレが気になるな…」 俺は、アリサの頭にある大きな花の飾りを触る。 「晶、何を言うか!?アリサが選んだ髪型だぞ!!これが一番に決まっているだろ?!」 キッと俺の方を睨む新と、キッチンから出てきてクスクスと笑う母さん。 「ねー。お母さんの言った通りでしょ?」 母さんがアリサに声をかける。 アリサを見ると少し口を尖らせている。 ん〜、妹とはいえ、やはり年頃の女の子だ。 容姿や格好について、マイナスな事は言わない方がよかったか? 「お母さんはね、浴衣だからあんまり着飾らない方がいいって言ったんだけど。アリサがそれ付けたいって言ってね」 「だ、だって!折角の浴衣だもん!!これの方が可愛いと思って…」 末っ子で女の子。 去年までは小学生。 甘やかされる要素満載なアリサは、目を潤ませ、今にも泣きそうだ。 "ちょっと言われただけで泣くなよ"と思いつつ、俺も大概妹に甘い。 「そうだな。お洒落したいよな。でも、これより…、こないだ新に貰ったヘヤピンの方が良いんじゃないか」 そう言ってアリサの頭を撫でる。 「あのピン、確かピンクだったろ?今着てる浴衣にも合うし、片側に重ねて付ければお洒落に見えるよ」 俺の言葉に、目に溜まっていた涙を引っ込めたアリサは、くしゃりと笑って、 「うん!!そうする!!」 と言って、パタパタと足を鳴らして自室に向かった。

ともだちにシェアしよう!