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チラリと?!夏祭り 第2話
「あぁー生きかえるー」
薄っすらかいていた汗がスーッと引く。
リビングはエアコンが効いており、洗面所に比べ、かなり冷えていた。
「晶、お前、アリサが何回も呼んでんのに、何でこねーんだよ」
ソファに座っている新が、首を後ろに回し俺を見る。
思っていた通り、新が面倒い状態だ。
「俺も夏祭りに行くから、用意してたんだよ」
「男がそんな用意に時間かかるか!」
"デートの度に洗面所を30分以上占領するお前が言うか"と思いつつ、面倒いので"ハイハイ"と軽くあしらう。
「で、アリサは?」
リビングを見渡すが、俺を呼んだ張本人の姿が見えない。
「アリサは…」
キモい笑顔を浮かべ、キッチンに目を向けた新につられ、俺もキッチンの方を見た。
そこには、アリサではなく母さんがいた。
目が合うと、呆れ笑いでチラリと後ろに目をやる母さん。
すると、
「じゃじゃーん!!」
母さんの後ろから、浴衣を着たアリサが飛び出した。
「アキちゃん、どおどお??」
ぴょこぴょこ小走りで俺の前にきたアリサは、目の前でくるりと一回転。
ニコニコしながら俺を見上げる。
「可愛いよぉー、アリサー!」
「アラタにぃには聞いてない」
デレデレの新には目を向けないアリサ。
どうも、新とアリサの兄妹愛は、新の一方通行のようだ。
逆に、
「ね、どおどお?似合う??」
年が近いせいか(それでも4つ離れているが)、俺に懐いているアリサ。
「んー浴衣似合うけど…、コレが気になるな…」
俺は、アリサの頭にある大きな花の飾りを触る。
「晶、何を言うか!?アリサが選んだ髪型だぞ!!これが一番に決まっているだろ?!」
キッと俺の方を睨む新と、キッチンから出てきてクスクスと笑う母さん。
「ねー。お母さんの言った通りでしょ?」
母さんがアリサに声をかける。
アリサを見ると少し口を尖らせている。
ん〜、妹とはいえ、やはり年頃の女の子だ。
容姿や格好について、マイナスな事は言わない方がよかったか?
「お母さんはね、浴衣だからあんまり着飾らない方がいいって言ったんだけど。アリサがそれ付けたいって言ってね」
「だ、だって!折角の浴衣だもん!!これの方が可愛いと思って…」
末っ子で女の子。
去年までは小学生。
甘やかされる要素満載なアリサは、目を潤ませ、今にも泣きそうだ。
"ちょっと言われただけで泣くなよ"と思いつつ、俺も大概妹に甘い。
「そうだな。お洒落したいよな。でも、これより…、こないだ新に貰ったヘヤピンの方が良いんじゃないか」
そう言ってアリサの頭を撫でる。
「あのピン、確かピンクだったろ?今着てる浴衣にも合うし、片側に重ねて付ければお洒落に見えるよ」
俺の言葉に、目に溜まっていた涙を引っ込めたアリサは、くしゃりと笑って、
「うん!!そうする!!」
と言って、パタパタと足を鳴らして自室に向かった。
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