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チラリと?!夏祭り 第6話

電車が駅に着くと、どっと乗車客が降り改札口に向かう。 俺達もその流れにのって改札を出た。 「毎年思うけど、こんだけの人、どっから湧いてくるんだ?」 「……俺、久々に電車で人酔いしたかも」 うじゃうじゃいる祭り客を見ながら、雅人と雅実が話していると、 「でも、人がぎゅうぎゅうっていうのも夏祭りって感じじゃない?ね、寺島君?」 小森さんが恐ろしいほど可愛い笑顔で俺に話しかけてきた。 「そ、そうだね…」 しどろもどろに答えた俺の方に、ちょこちょこっと駆け寄ってきた小森さん。 「ねぇ、寺島君、雅実君と二人っきりになりたくない?」 「え?」 小森さんが小声で俺に提案する。 「一緒に行こうって誘ったけど、やっぱり雅実君と二人っきりの方が良いよね?」 「ま、まぁ…」 ニコニコ笑いながら言う小森さんが、なんだか怖い。 「だよね、だよね!だから、花火会場までは一緒に行って、そこで二手に分かれよ?ね?」 小森さんは、上目遣いでコトリと首を右に傾ける。 これは……、 「う、うん…」 としか言えねーーーっ!! 俺が頷くと、小森さんの笑顔がさらにパァァっと華やぐ。 「あぁー良かった!!ホントはね、折角の夏祭りデート、邪魔して悪いなぁ〜って思ってたんだ!けど、雅実君の浴衣姿見たかったし、雅人との双子2ショットも撮りたかったから!」 小森さんは満面の笑みで、もっともらしい事を言っている。 が、どこか違和感を感じてしまうのは何故だ。 「それにしても……、雅実君の浴衣姿、素敵だよね?」 今度は左にコトリと首を傾ける小森さん。 急に空気が変わった。 「雅実君って、本物のイケメンだから、何でも様になるよねぇ。外国人みたいだから浴衣ってどうなんだろうって思ってたけど、全然違和感なく格好いいし、ねぇ?」 ――ゾクッ―― 小森さん笑みが黒いモノを変わり、再び悪寒が走る。 「いつもと違う雅実君に、つい触りたくなっちゃうよねぇ?」 さっき見た右口角を上げる小森さんの仕草に、顔が引きつる。 「イケナイコト、したくなっちゃうよねぇ?」 ……バレている。 彼女には俺の欲望がバレている。 もしかして、無意識に雅実に触っていたか? 外気の暑さによるものではない汗が、タラリと背中を伝う。 「大丈夫。寺島君は、実際に行動してなかったから」 俺が思っていることを見透かすように言う小森さん。 「でも、雅実君はイケメンで目立つから……、は、いるよ?」 クスリと悪魔の笑みをこぼし、雅人の方へ向かった小森さん。 俺は悟った。 彼女には、逆らえない。 彼女に逆らったら、色んな意味で明日はない。

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