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チラリと?!夏祭り 第7話

「寺島、あそこにヨーヨーすくいがある!」 前方にあるヨーヨーすくいの出店を指差し、少年のような笑顔を俺に向ける雅実。 自然と自分の頬が緩むのが分かる。 何はともあれ、雅実と二人っきりになれたのは正解だった。 花火会場向かう途中に"はぐれた"ということで、雅人、小森さんカップルと別れた俺と雅実。 小森さんの話では会場についてからということだったが、人の多さに行き道で分かれた方が自然だと思ったのだろう。 すぐに俺と雅実は二人になれた。 これだけ人が多いと、男二人でも特に気にならない。 普段は大人びて落ち着いている雅実も、今日は少し子どもっぽい。 それがまたギャップ萌えなわけで。 アリサが読んでいる少女漫画の主人公のように、さっきからキュンキュンしっぱなしだ。 ただ、ここにきて1つ問題が発生している。 「ねえねえ、私達と一緒にまわらない?」 そう、行く店行く店で、逆ナンされるのだ。 今も、雅実がヨーヨーすくいをしているのを見ていると声をかけられた。 「君とあの子一緒だよね?私達も二人だし、ちょうど良くない?」 しっかりと化粧をほどこした綺麗めな女性が二人。 年上だろうか。 しかも、俺に声をかけてくるが、目線はその先の雅実にロックオン。 何がちょうどいいんだ? 大体、雅実は肉食系女子が苦手なんだよ。 「すいません、別の場所にツレがいるんで」 申し訳なさそうにしつつ爽やかな笑顔をする。 逆ナンしてきた二人は、"そっかぁ~残念"と言って人混みに消えていった。 肉食系だと食い下がるタイプもいるが、不幸中の幸いで今のところすぐに引き下がってくれている。 「寺島、また?」 いつの間に取り終わったのか、緑のヨーヨーをパシャパシャさせている雅実。 少しうんざりとしている。 折角の夏祭りに、そんな顔させたくないな。 そう思って、 「まぁ~仕方ないだろ。イケメン二人が歩いてたら、稀にいる強者(つわもの)女子が声をかけてくるもんだよ」 俺がおちゃらけて言うと、 「なんだそれ」 雅実は軽くハハっと笑った。 あぁ、ほら、またキュンとするじゃん。 俺がときめいていることなど露知らずな雅実は、遊んでいたヨーヨーを俺に渡し、 「りんご飴、買ってくるな」 と言って、ヨーヨーすくいの隣りにあるりんご飴の出店へ。 あまり混んでいなかったので、すぐに買えたようだ。 嬉しそうな顔でりんご飴を舐める雅実が、戻ってきた。 オイオイ……、いい加減にしろ、俺! 何度瞬きしても、りんご飴を舐める雅実が、どうしてもエロく見える。 真っ赤なりんご飴を、雅実の真っ赤な舌がペロペロと…。 なかなかの大きさのりんご飴を、たまにパクリと嚙みつくのが、また…。 さっきの邪念が、再びむくむく膨れていく。 「あ、もしかして、寺島もりんご飴食べたかった?」 あまりにもジッと見ていたのだろう。 俺の視線に気づいた雅実は、 「ちょっといる?」 なーんて言って、当たり前のように俺の目の前に差し出す。 今しがた舐めていた、真っ赤で大きなりんご飴を。 思わず"ゴクリ"と喉が鳴る。 「寺島?」 なかなか舐めようとしない俺に、雅実がりんご飴を"ん"と俺の口元にもってきた。 ――ぺろ…ぺろ…―― 恐る恐る食べる俺に、不思議そうにしながらも、雅実は笑っている。 「あ、ありがとう」 「そんだけでいいの?」 「う、うん」 俺が舐めたりんご飴を、やはり嬉しそうに舐める雅実。 ……色々とお腹いっぱいだ。

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