133 / 140
チラリと?!夏祭り 第7話
「寺島、あそこにヨーヨーすくいがある!」
前方にあるヨーヨーすくいの出店を指差し、少年のような笑顔を俺に向ける雅実。
自然と自分の頬が緩むのが分かる。
何はともあれ、雅実と二人っきりになれたのは正解だった。
花火会場向かう途中に"はぐれた"ということで、雅人、小森さんカップルと別れた俺と雅実。
小森さんの話では会場についてからということだったが、人の多さに行き道で分かれた方が自然だと思ったのだろう。
すぐに俺と雅実は二人になれた。
これだけ人が多いと、男二人でも特に気にならない。
普段は大人びて落ち着いている雅実も、今日は少し子どもっぽい。
それがまたギャップ萌えなわけで。
アリサが読んでいる少女漫画の主人公のように、さっきからキュンキュンしっぱなしだ。
ただ、ここにきて1つ問題が発生している。
「ねえねえ、私達と一緒にまわらない?」
そう、行く店行く店で、逆ナンされるのだ。
今も、雅実がヨーヨーすくいをしているのを見ていると声をかけられた。
「君とあの子一緒だよね?私達も二人だし、ちょうど良くない?」
しっかりと化粧をほどこした綺麗めな女性が二人。
年上だろうか。
しかも、俺に声をかけてくるが、目線はその先の雅実にロックオン。
何がちょうどいいんだ?
大体、雅実は肉食系女子が苦手なんだよ。
「すいません、別の場所にツレがいるんで」
申し訳なさそうにしつつ爽やかな笑顔をする。
逆ナンしてきた二人は、"そっかぁ~残念"と言って人混みに消えていった。
肉食系だと食い下がるタイプもいるが、不幸中の幸いで今のところすぐに引き下がってくれている。
「寺島、また?」
いつの間に取り終わったのか、緑のヨーヨーをパシャパシャさせている雅実。
少しうんざりとしている。
折角の夏祭りに、そんな顔させたくないな。
そう思って、
「まぁ~仕方ないだろ。イケメン二人が歩いてたら、稀にいる強者 女子が声をかけてくるもんだよ」
俺がおちゃらけて言うと、
「なんだそれ」
雅実は軽くハハっと笑った。
あぁ、ほら、またキュンとするじゃん。
俺がときめいていることなど露知らずな雅実は、遊んでいたヨーヨーを俺に渡し、
「りんご飴、買ってくるな」
と言って、ヨーヨーすくいの隣りにあるりんご飴の出店へ。
あまり混んでいなかったので、すぐに買えたようだ。
嬉しそうな顔でりんご飴を舐める雅実が、戻ってきた。
オイオイ……、いい加減にしろ、俺!
何度瞬きしても、りんご飴を舐める雅実が、どうしてもエロく見える。
真っ赤なりんご飴を、雅実の真っ赤な舌がペロペロと…。
なかなかの大きさのりんご飴を、たまにパクリと嚙みつくのが、また…。
さっきの邪念が、再びむくむく膨れていく。
「あ、もしかして、寺島もりんご飴食べたかった?」
あまりにもジッと見ていたのだろう。
俺の視線に気づいた雅実は、
「ちょっといる?」
なーんて言って、当たり前のように俺の目の前に差し出す。
今しがた舐めていた、真っ赤で大きなりんご飴を。
思わず"ゴクリ"と喉が鳴る。
「寺島?」
なかなか舐めようとしない俺に、雅実がりんご飴を"ん"と俺の口元にもってきた。
――ぺろ…ぺろ…――
恐る恐る食べる俺に、不思議そうにしながらも、雅実は笑っている。
「あ、ありがとう」
「そんだけでいいの?」
「う、うん」
俺が舐めたりんご飴を、やはり嬉しそうに舐める雅実。
……色々とお腹いっぱいだ。
ともだちにシェアしよう!