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実験開始
宗方は持っていた団子を凝視して……俺に視線を戻した。
「ねぇ、ちなみに……材料は……?」
「えっと……ドッグフードと犬用のミルクと……本能を呼び起こす為に生血……は怖いからレバーペーストと、骨も手に入んないから煮干しの粉末……」
「一応食べられる物ではあるのか……犬なら喜びそうだな……」
くくっと忍び笑いが聞こえる。
冷静になって考えると馬鹿な事この上無いが……あの時は真面目に必死だったんだ。
「もう、いいだろ?宗方を実験台にしようとしたのは謝るよ。もうしないから離し……て?」
目の前に団子を突き付けられた。
「ちょうど2つ残ってるし、音羽が一緒に食べてくれるなら実験に付き合ってやるよ」
差し出された団子を見る。
見るからに不味そう……。
「……あんまり食べたくない」
「自分で食べられない物を俺に食べさせようとしてた訳?」
「う……あの時は球技大会の事で頭がいっぱいで……」
じと目で宗方が見下ろしてくる。
「わかった!食べる!食べるよ!!」
自分で作った団子を睨み付ける。
何でこんな事に……滅多な事をするもんじゃないな……。
覚悟を決めて宗方と向かうと、団子を同時に口の中へ放り込んだ。
「うっ……くっ……クソマズ……」
生臭かったり、脂っぽかったり……。
吐き出したかったけど、眉をしかめながらも飲み込む宗方を見て、作った俺が吐き出すわけにいかないと必死に喉に通した。
……………………。
「何も起きない……」
まぁ……当然だよな……。
「口の中……いつまでも残ってる……」
何か口直し持ってたっけ?
荷物の中を探してみようとして、宗方にお茶のペットボトルを渡された。
「飲みかけで悪いけど、良かったら飲んで?」
「あ……ありがとう」
普段ならお断りだが背に腹は代えられないぐらい口の中がカオス。
口の中を洗い流すと宗方も俺の手からペットボトル取って口をつけた。
よく涼しい顔して食べれたよな……。
「うっ!!」
いきなり宗方は喉を押さえて踞った。
「え!?何?どうした!?」
俺は何とも無いのに……まさか本当に毒だった?
慌てて宗方の背中を擦る。
「宗方!!吐けるか!?待ってろ……いま先生を……」
立ち上がりかけた手を掴まれる。
「ははっ!嘘だよ。何とも無いよ」
「なっ……!何だよ!!本気で心配したのに!!もう帰る!!」
自分の席に向かい荷物を用意する俺の背後で何かが落ちた音がした。
振り返ると転がったペットボトルからお茶が溢れていく……。
踞り唸る宗方……。
「もう騙されないよ……宗方も帰ろ……」
「う……ぐ……うああぁぁっ!!」
顔を上げ、喉をかきむしりながら口を開けた宗方の歯……あんなに尖ってたっけ……。
その腕も、ザワザワと毛深くなっていき……白い毛で覆われる。
「宗……方……?」
「うう……うが……あ……グルルル……」
人間の声とは違う獣が喉を鳴らすような音。
また踞る宗方の頭には獣の耳がはえ……尻尾が揺れている。
「宗方っ!!どうしたんだよ!?まさか本当に獣人!?」
宗方に駆け寄り肩を抱く。
「……近付くな……音…羽……」
苦し気な声に顔を上げさせると……。
金色に光る瞳と視線がぶつかった。
その瞳に射ぬかれて……
ドクンッ……
え……?
ドクン……ドクンッ……
脈がやけに大きく感じ……骨が溶かされるような、体が捩れる様な激痛が体全体を襲う。
「あ……が……はぁぁぁっっっ!!!」
「音…羽……」
もがく俺の手を宗方が握る。
握られた俺の手は宗方と同じように灰色の毛で覆われていた。
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