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オメガバース
長い事こうして繋がっている。
辺りも暗くなり……それでも視界がはっきりしているのが人間で無くなったという現実を突きつけてきて悲しくなる。
ぼんやりと宗方の肩に顔を乗せていた俺の顔を宗方が覗きこんで来た。
「音羽は……『オメガバース』って知ってる?」
「獣人のいた世界にあったって言われてる『6つの性別論』の事?」
「そう。獣人になったついでにさ……それも復活したんじゃ無いかなと思うんだよな……音羽からすごい良い匂いして堪えられない……」
特に……何も匂わないと思うけど……。
自分の体を嗅いでみる。
もしそうだとして……宗方は…どう見てもアルファだろうな。
この瞳に逆らえなかった事も納得が出来る。
「え……じゃあ俺はオメガって事?……獣人になっても俺が底辺なのは変わらないんだ……」
思わず黙り込んでしまった。
「何で今日……俺が放課後残ってたと思う?」
「?何か用事が有ったから?」
「何で見るからに不味そうな団子を食べたと思う?」
「??実はドMとか?……ん……分かんない……」
優しげに目が細められて宗方が笑う。
「好きだったんだよ……音羽。誰も居なくなった教室、お前の荷物だけ残ってて……二人きりならいっぱい話せるかと思って待ってた」
「へ……?」
好きって……あの好き?
俺を待ってたって……。
「……アルファとオメガだってわかって……本能で俺はずっとお前に惹かれてたんだな」
「宗方が俺を?」
俺……何にも魅力無いと思うけど?
「この先、隠れて生きなくちゃいけない。苦労は多いと思う……でもこの世界にアルファとオメガは俺達だけだ……お前を幸せに出来るのが俺だけだと思うと喜びしかないよ」
俺に気を遣ってとか……社交辞令とかじゃなく、本当に嬉しそうに宗方は笑う。
「知ってる?オメガがヒート……発情期を迎えると強力な媚薬を盛られたみたいに体が辛いんだって……番のいないオメガは誰彼構わず誘惑してセックスしまくるって……」
「え……ヤダ……」
そんな……想像しただけで嫌悪感がわく。
しかし……確かにオメガはそういう生き物だったと何かで読んだかも……。
理不尽だが社会のストレスの捌け口だとか……捌け口が無いと社会は狂う。
オメガは社会の均衡を保つための犠牲だった。
ギュッと宗方の上着を握りしめた。
震える指に宗方が手を重ねた。
「オメガは最下層のままじゃ無かっただろ?」
「『匂い』?」
「そう……俺を手玉に取ってよ……音羽」
手を持ち上げられて指に唇が触れる。
「アルファじゃ無くてもベータでもヒートを落ち着けれるし妊娠もさせられる……でも番になれるのはアルファだけ……番になればヒートになっても誘惑は番にだけ向かう。俺だけが音羽を苦しみから救える……こんな極上の幸福に満たしてくれるのは音羽だから」
宗方の尻尾が大きく揺れている。
こんな状況なのに……アルファはやはり器が違う。
「宗方……こんな事した俺と……一緒に居てくれる?」
宗方の指に指を絡めた。
「音羽が実験台に俺を選んだのもきっと運命。俺を選んでくれてありがとう、音羽」
運命……俺も……本当は宗方に惹かれていたのかな……?
どちらからともなく、唇を重ね合わせた……。
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