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初変体

先ほどの宗方の姿を思い浮かべながら、変われ、変われと念じ続ける。 「う……ぐぅ……」 鳥肌が立つ様にゾクゾクして骨が軋む様な感覚が有ったけど……結局変われずに終わった。 練習を続けたらいけそうだな。 「……音羽?えっと誘ってくれてるのかな?」 「え?あ!?ごめん!!」 宗方が戻ってきた。 こんなバカみたいな姿を見られてしまった。 慌てて服をかき集めると……鼻先に血の匂い。 ドクドクと身体中の血管が暴れ出す。 「あ……あぁ……ううっ!!」 体が熱い。 ミシミシと筋肉痛みたいな痛みが全身を襲って…。 俺の姿も狼へ変わった。 耳と尻尾の色からそうだろうと思っていたけど宗方とは違う灰色の狼。 『宗方!俺も狼なれた!!これで宗方について行ける!!』 宗方の周りをぐるぐる回る。 足手まといにならないですみそうな事が嬉しくて尻尾も大きく揺れてしまう。 「狼の姿も可愛いね、音羽!」 ギュッと抱き締められたけど……あれ? 『……宗方も狼になって貰っても良い?』 ズボンを脱いで、宗方も狼の姿になってくれたけど……並んでみて、やっぱり全然違う。 二回り以上体格が違った。 大人と子供位の差がある。 アルファとオメガって……。 落ち込んで丸まった俺の体に寄り添う様に宗方も横になる。 こうやって包み込まれるとまんま親子みたいだ。 『音羽と一緒、嬉しい』 慰める様にペロペロと顔を舐めてくれる。 『お腹空いたろ?飯にしよう』 そう言うとスッと宗方は人間の姿になった。 俺も……少し手間取ったけど何とか人間の姿になれた。 宗方に続いて外に出ると、いつの間に……石で釜戸が出来ていて。 宗方が解体したのか、肉の塊を石の板の上で焼いてくれる。 「流石に生肉は無理だろ?焼けば音羽も何とか食べられると思うよ」 木の枝を削ったと思われる箸を渡され、いたれりつくせりで初熊肉へ箸を伸ばす。 固そうなイメージだったけどしっかり噛める。 顎の力も変わっているのだろうか? 野性味溢れる肉だが……それが美味いと感じる。 味覚も狼よりになっているのかも? 生肉でもいけそうだけど……心に良くない。 わざわざ焼いてくれた宗方に感謝した。

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