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愛を求めて

お腹も膨れ、洞窟に戻り二人で横になる。 固い地面で寝るなら獣の姿が楽だろうと二人で……二匹で丸まって眠った。 テリトリーにマーキングはしてきたからゆっくり眠れと宗方は言う。 マーキング……ってあれかな……? 宗方の名誉の為に深くは考えないでおこう。 宗方はしっかり獣の生活に馴染んでいる。 このまま……人間だった事を忘れてしまったりはしないだろうか。 父さん……母さん……。 いつか……また会えたらいいな。 その時に俺は理性があるだろうか? 二人を襲ったりはしないだろうか? 二人は……俺を受け入れて……くれるだろうか? 『……音羽?泣いてる?』 『ごめん……俺も宗方みたいに強くなるから……今だけ泣かせて……』 隠れるように宗方の胸に顔を埋めた。 俺の背中を毛繕いするように優しく舐めてくれる。 『……音羽の幸せの為なら俺は何でも出来る……俺を信じて』 明日から……宗方の為に……俺も強くなろう。 そう決意を固め、優しい声音で俺の名前を呼ぶ宗方の声を子守唄に俺は眠りへと落ちていった。 良く寝た……。 あくびと共に目を覚ますと、宗方の姿がない。 のそのそと巣穴を出ると風に混じって宗方の匂いがする。 こっちかな……方向を決めると夕陽に向かい駆け出した。 途中、兎の匂いがして……ゆっくり近づき……意を決して捕まえてみた。 残念ながら、罪悪感はもう感じなくなっていた。 宗方に誉めて貰おうと兎をくわえて意気揚々と宗方のいるであろう方向へ向かって駆けた……。 『音羽!自分で兎を狩ったのか!?すごいじゃないか!』 そう誉めちぎる宗方の脇には大きな猪が転がっていた。 『……うん。でも全然だったね』 なんだか、ちょっと虚しくなった。 『俺のは音羽への求愛だから、俺より大きいの音羽に獲られると困る』 ……求愛。 獲物を狩るのが求愛なのか……。 明日はもっと大きい獲物を獲れる様に頑張ろう。 それぞれ獲物をくわえ、並んで洞窟へ帰った。

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