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遠い街
山の中だと狼の姿の方が楽だったりするので、狼の姿でいる時間が長くなってきている。
宗方の後ろを一生懸命ついて行くけれど、体の大きさが違うのでついて行くのがやっとだけれど、宗方もこちらを気にしながら立ち止まって待ってくれたりする。
『この実も食べられる』
宗方は大きな口で器用にもいで、袋に収穫していく。
俺は口から宗方が人里近くで拾ってきたスーパーの袋を下げている。
中には宗方と一緒に収穫した山菜や木の実。
半分は人間なんだから肉だけなんて駄目だと、こうして山の中を駆け回り一緒に山菜などを探している……俺は付いて回ってるだけだけど……いつどこから猪や熊が出てきても良い様に荷物を持つのが俺の役目だ。
『宗方はなんで山菜とか詳しいの?田舎生まれ?』
『むかし災害時生き延びれる様にと、親父に山奥にサバイバルに連れて行かれてな……叩き込まれた』
『……すごいお父さんだね』
そのおかげでこうして食に困らない訳だけど……。
断崖になっている場所に出て、視界が開けた。
広がる木々……遠くに街が見えた……。
『…………』
『音羽……行こう』
宗方が鼻先を俺の顔の顔に擦り寄せて、帰る様に促された。
オメガと言えど狼……走れば数時間で街まで行けるだろう。
……けれど、その街の景色はひどく遠く感じた。
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