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侵入者

なんだかんだで……意外に快適な暮らしが続いている。 「生活にも慣れてきたし……もう少し山奥へ移動しようか?」 「う〜ん……何だか今日は体が重くて……明日でも良い?」 狼の姿に変身も出来ず、宗方が敷き詰めてくれた枯れ葉の上で横たわっている。 「そうか……今日は無理せず休んでろ。力のつく物を獲って来る」 「ごめん……」 返事もそこそこに俺は目を閉じた。 どれぐらい寝ていたのだろうか……不審な気配を感じて俺は体を起こした。 重い体を引きずりながら入り口からそっと外の様子を伺う。 侵入者……宗方の気配は側にない。 俺がこの巣を守らないと……。 何処だ……何処にいる……。 必死に匂いを辿る……嗅いだ事のある気がするが……いろんな匂いが入り交じっていて探り辛い。 突如、犬が茂みから飛び出してきた。 犬の匂いではなかったが……こちらを威嚇して近づいて来るので、狼の姿にはなれないけれど……。 グルルル……。 精一杯、虚勢を張ってにらみ合いを続ける……犬は逃げていった。 逃げて言ったと言うよりは何かに気付いて去って行った感じだったが、何とか追い払えた。 ホッとした俺の視界の端に光る物が見え……鉄砲!? 急いで隠れようとして……ドクンッ!! 体が大きく脈打ち、足が思う様に動かず……太ももに鋭い痛みが走った。 撃たれた!? 足にダーツの様な物が刺さっている。 慌てて引き抜き、重い体を引きずって何とか逃げようとしたが……遅かった。 次第に体が麻痺して動かなくなっていく。 倒れた俺の視界に見慣れた人間の足がうつった。 「音羽 楽空(がく)君だよね。探したよ」 なんで……俺の名前。 耳を思い切り引っ張られた。 「やはり君は獣人なのか……この一緒に写ってる白い狼はどこに行った?君と一緒に行方不明になった宗方 勇波君なんだろう?」 写真を見せられ……最初の日…宗方の背に乗って移動していた時だ。 撮られていたのか……。 「しかし……本当に獣人が存在していたとは……研究して発表すれば俺も有名人だ」 手が伸ばされて来るのが分かるのに逃げられない。 体が動かないのに…心臓ばかりが激しく動いている。 「……この匂いは…そうかこれがオメガのヒートか……」 男の顔がにやりと歪に笑った。 ヒート……俺が? 力の入らない体を地面に投げ出されてズボンを奪われた。 尻尾を掴まれても痛みも感じない。 「本当に濡れてやがる……この匂いは……効くな……」 グチュグチュという音と何となくの感覚で、男に指を入れられているのが分かる。 「ははっ!!見てみろ……イヤらしい体だ。麻酔が効いてるのにこんなに濡れてやがる」 男の指の間で糸をひく液体を見せつけられた。 人としての扱いじゃない…面白がられ物の様に扱われる。 グチュグチュとわざとらしく音を立てながら男が、侮蔑の言葉を投げかけながら俺の中を弄っている。 嫌だ…嫌だ……俺に触るな……!! しかし指一本、声すら出せない。 後ろから腰を持ち上げられて……男が覆い被さってくる。 「オメガの抱き心地まで実際に経験出来るとは……今日はラッキーだな」 止めて……触らないで…… ただ涙だけがポロリと溢れた。

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