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第5話

 化け狐が御影だとわかった彼は、その絵が描かれた本を持ち帰った。  それは、とある孤独な作家の日記だった。  妻を亡くしたその男は、平穏といえば聞こえがいいが、砂も砂糖も区別がつかないような無機質な日々を送っていた。しかし、ひょんなことから巻物に封印されいた化け狐……御影との出会いから生活が一変する。  男は御影に心を奪われ、亡くなるその日まで、日記は御影のことで埋め尽くされていた。  作家という職業柄か、御影との何気ない会話がまるで宝物ように、愛おしく感じているのが、文字を通して伝わってきた。  日記を読む限り、御影と作家の関係はあくまで主従関係に過ぎなかったようだが、作家が御影に対して特別な感情を抱いていたのは明白だった。  時折、落書きのように描かれる御影の似顔絵を見ると胸を掴まれるような妙な気持ちになった。  その気持ちがなんなのかわからぬまま、日にちが経つごとに御影への思いが募っていった。  曽祖母に言わせれば、狐に憑かれた状態だろう。彼女が知ったらきっと怒るに違いない。  御影の封印を解く方法も、永遠に葬る方法も知ったが、どちらも実行できないまま、何度も日記を読み返した。  そしてある夜、ついに御影は史己の夢に出てきた。  背後から、御影は細い指を伸ばして史己の目を塞いだ。彼は振り返ってその姿を捉えようとするが、見えるのは彼の着物の袖ばかりで、そんな彼をあざ笑うようにまた後ろから目隠しされた。  史己はその細い手首を掴むと、もう逃すまいと御影を押し倒した。そして、その唇に己の唇を押し付けた。その柔らかな唇を吸うと、御影も柔らかく彼の背に手を回して、受け入れてくれる。彼の金色色のふさふさの耳に手を伸ばして指で撫でると、くすぐったそうな声が聞こえた。その感触を楽しみながら、もう一度口づけをしようとしたその時︱目が覚めた。  下着が濡れる感触が広がっていくのを感じながら、深いため息をついた。  暗闇の中、手探りでティッシュ箱を探しながら、これはもう会うしかない……と、決心したのだ。

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