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第2話~孤独と旅立ち~

家をでて、成はとにかく歩いた。 いくつも山を越え、町を超えた。 途中でわずかな資金で衣類などを揃えながら 落ち着くべき場所を探し求め旅をしていた。 普通の容姿ではない成は主に行動は夜になっていた。 昼間は誰も来ないであろう廃墟や山中でひっそりと 息をひそめ眠っていた。 食事は主に木の実、魚、なんでも口にできるもので空腹をしのいだ。 だが、不思議なことに満月が近づくと身体が熱くなり、空腹感がなかった。 山の中を駆け巡る速さもいつもの倍になっている。 なにより、自分の中のもう一人の自分が暴れている。 その衝動を抑える事が苦しくなってきていた。 一人になり、3年ほどの月日が経ったある日、 出会うべき運命の番である、琥白に出会うのである。 成は誰もいない奥深い山の中にあった屋敷を見つけた。 そこに人が住んでいたようではあるがすでに廃墟にちかいその屋敷には主はいない。 幸いなことに、衣類などもそのまま残っていた。 その家は元の主が置いていったのか、古びた写真が数枚飾られていた。 もう、何年も前に居なくなったのだろう。 誰かが訪ねてきた様子もない。そして、成は思った。 ここを住処にしよう・・・ここならほとんど人が来ることはない。 そう感じた成はその日からこの古い屋敷に住む事にしたのだった。 成はその屋敷で冬を迎えるために、修繕や掃除をした。 また、槙を取りにいったり、獣を狩りにもいったりしていた。 あるていどのモノは使えるものがあるので一人の生活には困らない。 いつものように川に魚を釣りに行った成。 だが、その日は違った。 家からでて、川に向かう途中、不思議な香りが川上から流れてきた。 「・・・ん・・・なんだ、この匂いは・・・なんだか、すげぇ、いい匂い」 心地のいい香りのせいで、凄く気分が良かったのだ。 そのまま、釣りをしていると、 遠くから何かが川に落ちた音がした。 半獣人とはいえ、普通の人間よりは耳も、鼻も獣と変わりはしないのだ。 普通の人間なら聞こえない距離, と、当時に、先ほどからする香りがどんどん強くなってきた。 深い川の方向を見つけると 何がかな流れてくる。 確実に言えるのは、それは人だった。 光のせいなのかよくわからないが 髪の色が白く見える。 「・・・人?」 成は慌てて川に飛び込み流れてきた人間を助けた。 「おい!お前!大丈夫か?」 だが、ぐったりとしたその人間に反応はない。 その人間の肌は寒さのせいか白く見える。 髪の色も白髪・・・いや銀髪だった。 冷たい身体を抱えて川岸に連れて行く。 その人間は男だった。 「男か?・・・やけに綺麗な男だ・・・だが・・・こうも、冷えていると危ないな・・・ ケガ・・・しているのか・・・」 成は急いで屋敷に連れて帰り 暖を取るために火をおこし、身体を拭いて まずは温めた。 古い屋敷だし、タオルなんていいものはない。 何枚か残っていたシーツで身体をくるみ成自身が裸になり 冷たくなった人間の男を抱きしめた。 包帯・・・なんてそんなものはないのでケガの場所は とりあえず、綺麗そうな布で手当てし直した。 その時は必至で考えもしなかったが、成は人を抱きしめるのは 彼が初めてだった。 同じ男でも全然違う。 細い身体、白い肌、そして美しい銀髪・・・ なにより、成が酔うくらいのとても甘い香りがその人間から匂ってくる。 目を開けた彼がみたい。 声を聴きたい。 一体この人間はどうしてこんなところに来たのだろうか? そんな疑問が頭の中をよぎるが 今はただ自分に出来ること・・・身体を温める事が先だと思い 成は彼を一晩中抱きしめていた。 そう、甘い甘い心地の良い香りに包まれて 初めて人の肌に触れ、 誘われるように成自身も心地よい眠りについたのだった。

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