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第3話~琥白の想い~

逃げないと・・・ このままではいつかきっと自分は殺される・・・ ここにいると他の仲間と同じように発情期を迎え 知らない人間に侵され続け 気に入られたものだけが孕まされ自分と同じような者はみ な性の奴隷になる・・・ いやだ・・・ 琥白は走り続ける。 いつも夢に見ていた彼に会いに行きたい。 金色の瞳、金色の美しい毛並み 誰もがため息をつく美しい獣人に会いたい。 幼いころからいつも同じ夢を見ていた。 優しい金色の瞳はいつも夢の中の自分に微笑みかける。 彼は皆が気持ち悪がるこの銀色の髪を愛しそうに撫でてくれる。 会いたい・・彼が実在している保証はない。 だが本能が訴える。 彼はいる・・・ 必ずいる・・・ 確証はない。 だが、今チャンスを逃すと二度と逃げれない。 今しかない。 琥白はそう決断し、美しい月夜に、敷地の高い塀を乗り越え 今まで暮らしていた施設を抜け出したのだった。 琥白は駆け抜ける。 夢に見ていた彼の元へ・・・ 「はぁ、はぁ、はぁ・・・」 どのくらい走り続けたのだろう・・・ 何度も振り向き追手がきていないか確かめる。 自分と似た容姿のΩは何人もいた。 みなはそこで暮らすことに違和感を持っていなかった。 なぜなら、その施設はΩが何十人もいた。 発情期も管理されていた。 むしろ、そこで生きる方が外の世界で生きるより断然楽なのだ。 相手を選べない事がつらいくらいと感じるものも多かったと思う。 だが琥白は違った。 昔から満月に近づくと夢を見ていた。 美しい獣人に出会う夢・・・ だからこそ、この施設では生きていたくはなかった。 ほとんど外で暮らしたことのない琥珀は、体力も知れている。 足も傷だらけだ。 何日も走り続けめまいがしてきた。 身体が熱い。 熱がでたのだろうか・・・ でも捕まるわけにはいかない。 大きな木の陰で少し休んでいたら人の声がした。 「こっちだ!・・・こっちで反応してるぞ」 そんな声がきこえ焦る琥白・・・息をひそめ隠れていたが、 自分の手首の一部が光っていることに気がついた。 手首に何かが埋め込まれている。 落ちている枝を埋め込まれ光っている箇所に何度も刺し 皮をはいで埋め込まれているチップを取り出した・・・ 「。。。っつ。。。」 痛みをこらえそのチップを握りつぶした。 「・・・これさえ無ければ・・・」 痛みで意識が遠くなる。 着ている服を破り手首に巻き付ける。 「・・・いたっ・・・」 ここで捕まりたくない琥白は ふらふらになりながらも逃げる。 少し離れたところから声が聞こえた。 「おい、反応が消えたぞ!近くにいるか、死んだかどちらかだ!探せ!」 何人かの声が自分を追いかけてくる。 怖くなって走り出すと、少し離れた場所に数人の男たちの姿があった。 「いたぞ!!そこだ!」 琥白は痛む傷を押さえながら走り出した・・・が、そこは高い崖のうえ・・・ 死を覚悟した。 「そこを動くな!!」 男が一人叫んでこちらに駆け寄ってくる。 琥白はつぶやく・・・ 「・・・ここでつかまるくらいなら・・・死んだ方がましだ・・・」 こちらに走ってくる男たちの方を向き、 微笑んだ琥白はそのまま後ろ向きの状態で崖から飛び降りた。 青い空を見上げながら手をかざす・・・ 「・・・会いたかったな・・・」 ぽつりとつぶやくと、男たちが数人のぞき込んでいたが、 既に琥白の身体は水の中に沈んでいる・・・ ・・・冷たい・・・ ・・・会いたい・・・ ・・・誰か・・・助けて・・・ ・・・一人で・・・死にたくない・・・ ・・・神様は信じない・・・けど・・・ ・・・彼に会いたい・・・ そこで琥白の意識は途切れてしまう。 だがすでに運命は動き始めていた。。。 琥白が求めていた獣人は 既に琥白の存在に気が付いていたといってもいい・・・ 琥白が自ら出していた香り・・・ 運命の相手にしかわからない甘い甘い誘惑の香り・・・ その香りに気が付いた成は水の中に沈んでいる琥白の元へ 向かっていたのだ・・・ まるで運命の鎖に手繰り寄せられるように・・・ お互いの運命が求めあっていた。

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