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第6話
「本当はもうちょっとスマートに、ロマンチックに口説きたかったんだけど、だめだな。理性が働きそうにない」
ギシリ、と両腕をエイトの顔の両脇に突き、ブレッドは秀麗な眉を寄せた。
エイトは両手で顔を覆い、体をめぐる熱を必死で抑えようとするが止めどなく溢れる欲望の渦に容赦なく身も心も絡めとられる。
「僕は……自分がこんなに浅ましいなんて……も、恥ずかし……」
「あぁ、君はなんて可愛らしいんだ」
エイトの膝の間に割り入ったブレッドが感嘆の声をあげる。滲む視界を見つめる瞳は懇願した。
「エイト、私のつがいになって欲しい。そして結婚してすぐにでも私の子を産んでくれ。たくさんの子だ。私はそのためにずっと種馬として君のそばにいることを誓うよ」
ブレッドは馬族では最上級とされるプロポーズを惜しみなくエイトに贈る。
だがその言葉に、エイトは青褪めた。浮かされていた頭に氷塊がぶつけられたような衝撃が走る。
「ちょっと待って!僕とあなたが運命の番であることは認めるし、嬉しいけど……まだ僕は半人前の社会人です。やっと園の子たちとも仲良くなって、保護者ともあまりどもらないでお話しできるようになったばかりなんです。子供は可愛いし、そりゃいつかは自分も産みたいけど、今はまだ……子供は無理です」
目を伏せて尻すぼみになるエイトを、ブレッドは優しく抱き起こし、ベッドの端に並んで腰掛けた。
「そうだな、すまない。あまりの嬉しさに先走りすぎた。今後のことはゆっくりと二人で話し合っていこう」
「わがまま言ってごめんなさい。あの、子供はまだ考えられないんです……けど……」
「いや、いいんだ。私も長いこと待っていた。今更もう数年伸びたところで、なんの問題もない」
ブレッドの優しさに、この人が『運命の番』でよかった、と心から思う。少し冷えた心に温かさが染みる。そこからじわじわと膨らむ熱をエイトはもう押さえつけることなどできなかった。
「僕はとてもわがままだ……ブレッドさんの願いは拒絶したのに、つがいの契約は結びたいだなんて……」
ぼそりとエイトが呟くと、強い力で抱きしめられた。
「私も君をこのままで放っておくなんてできない。ヒートがきたら他のアルファが寄ってきてしまうなんて耐えられない」
抱きしめられていた腕が緩まると、顎をとって上向かされた。唇に熱く柔らかいものが触れる。
「ん……ふっ」
数回啄まれ、自然と緩んだ唇を優しく割って、ヌメリと舌が侵入してきた。
歯列をなぞられ更に口内を丹念に探る舌の甘さが堪らなくて、エイトは自分からブレッドの舌を追い求めた。
夢中になって吸い付いていると、いつの間にか服をはだけられて上半身をまさぐられていた。
「あっ……」
名残惜しげに離された唇が首筋をなぞり、鎖骨を這い、胸の頂きに辿り着いた。
「ふぁっ」
すでに紅く膨らんでいた胸粒を吸われ、声が漏れる。反対の突起も押しつぶされて、思わず背中がのけぞった。
執拗に嬲られて、エイトは焦茶の髪に指を通す。
「も……そこばっか、ダメ」
サラリとした見た目だが、意外と弾力のある髪を掴んで止めさせようとする。けれど力の入らない腕はブレッドの頭を撫でるばかりだ。
「ああ、可愛いよ。君はなんて敏感なんだ」
ブレッドは顔を上げて再びくちづけをしながら、エイトに絡みついていた服を全てきれいに剥ぎ落した。
そしてそそり立つ欲望に手をかけ、すでに透明の雫を垂らしていた先端を親指で刺激する。
「あぁっ……あっ、いきなりそんな……」
不意打ちの攻撃に抗議の声を上げるが、ブレッドはエイトの瞳を見つめたまま、握っている手を何度もこすり上げる。
「ひゃあっだめ、そんな……でる……でちゃう、から」
上気した顔に涙を浮かべて見つめると、ブレッドはごくりと息を呑んだ。
「ずっと薬で抑えてたんだ。つらいだろう、とりあえず一回出しておいた方がいい」
「ふぁっあっ……あぁぁっ」
容赦ないブレッドの追い込みにエイトは呆気なく吐精した。
荒い息を吐きながら体をベッドへ投げ出す。
「ひどい……ヒドイよブレッドさん……一緒にイキたかったのに」
確かに嵐のような熱は落ち着いたが、一人だけで高みに登らされた悔しさに目尻から涙がこぼれる。
「そんなに煽らないでくれないか。私もあまり余裕がない」
深い溜息をついて、ブレッドも己の服を脱いでいく。露わになる肉体にエイトの目が惹き付けられる。
盛り上がった肩、分厚い胸板、綺麗に割れた腹筋、そしてその下の……
(え?は?なんだあれ?)
エイトは目を点にして、ごくりと固唾をのんだ。
なぜなら、ブレッドの股間にそそり立つソレは、そう、凶器だった。
エイトの前腕ほどもありそうな太さに、有り得ない長さ。
外からのわずかな明かりで照らし出されたのはまさに、赤黒い大根だった。
「怖がらないで、受け入れてほしい」
股間に刺さる視線が動揺で揺れているのを感じたブレッドが、困ったように呟いた。
「馬族のアルファはここが異常に発達しているんだ。強制的に交配させられた歴史があって、その名残だそうだ。その悪しき慣習は、イスティーができた時になくなったのだが。けれど、この大きさは変わらなかった」
淡々と語るブレッドだが、その声はどうか自分を受け入れてほしい、と叫んでいるように聞こえる。
息が落ち着いてきたエイトは起き上がると、膝立ちになっているブレッドに向かい合い、おもむろに凶器に手を伸ばした。
「っ!!エイト?」
驚くブレッドをよそに、熱く脈打つそれを撫でる。両手を使って根元から先端まで順に揉むと、頭上から詰めるような声が聞こえた。
「驚いてしまってごめんなさい。さすがに大きくてちょっとびっくりしちゃった。でも、ここもブレッドさんの一部。大丈夫、僕の本能はブレッドさんのコレを求めてるんです。全てが愛おしい、僕のつがいだから……」
そうして、先端に顔を近づけ、甘やかな匂いを強烈に放つそこに唇を寄せた。ぺろりと舐めると頭の芯がジンっと痺れだす。もっと、もっとと欲する本能に任せ、口を開いて喉奥まで迎え入れた。
「くっ……エイト、君はなんて……なんて……いや、もうなにもいえない……素晴らしい人……私の愛しい人だ……」
溜息をつきながら優しくエイトの頭を撫でていたブレッドは、ふいに上からエイトの腰を掴んで体制を入れ替えた。
「ふぁっ?」
一瞬の早業の後に、エイトはブレッドを跨がされて、尻を高々と眼前に突き出していた。
ヒート時にはアルファの精を受け入れる仕組みのそこは、すでに愛液に濡れ、受け入れ態勢に入っている。
「ひゃっ……やっ……あ、ああっ」
じゅるりと汁を吸われ、尖らせた舌で秘所をこじ開けられた。跳ねる腰を押さえつけられ、更に侵入する舌とともにゆっくりと指で後孔を押し広げられて、甘い声が止まらない。
「ああ、甘いな。それに、熱い」
ひとしきり舌でエイトを味わったブレッドは指を一本、奥へ奥へと進めていく。エイトが難なく根元まで飲み込んだのを確認し、もう一本増やし、内部を丹念に探った。
「あっ……ああっやああああっ」
三本目の指が入り、抽挿を繰り返すブレッドの指が柔らかいしこりに触れたとき、エイトがひときわ高い嬌声を上げた。
「ここだな、君の泣き所」
「あっああんっあっ…あっやぁっ……はっああぁ……」
容赦なく責められて喘ぐ。すでに咥えていたブレッドのものは口から外れ、快感を耐えるために握りしめているだけだった。
「もぅ、やめってぇぇ、また一人でイッちゃう、の、やだぁぁ」
荒い息の合間に懇願するエイトの脇を抱え、正面に向き直したブレッドは噛みつくように唇を貪った。
持て余した熱をぶつけるように情熱的に口腔を這い、舌を吸い上げられたエイトは息も絶え絶えですがるように体をブレッドに預ける。
そのタイミングを見逃さず、エイトの腰を掴み持ち上げてブレッドは注意深く後孔を己の危険な屹立へと沈めていった。
「んんんんっ……んむぅ……んっ」
あまりの衝撃に目を見開くが、発した声は全てブレッドの喉の中へと消えていく。
自身の重みも相まって、ブレッドの張り出した部分を容易く飲み込んだ。
「はあっあっ……ああっ、んぅ……」
その後に続く長い竿もゆっくりゆっくり、行きつ戻りつしながら徐々に深くエイトを貫き、離された口からは意味のある言葉はもはや出てこない。
断続的に指で見つけられた泣き所を刺激されて、口端からだらだと唾液が零れるがそんなことを気にする余裕はなかった。
ブレッドは眦から落ちる涙を舌で掬いながらそんなエイトを恍惚とした表情で眺めている。
「あぁ、本当に私のつがいは素晴らしい。今までここまで受け入れてもらえることはなかったのに」
どこまでも受け入れてもらえる自身にブレッドは嬉しくなる。
だが、苦しみながらもブレッドを招き入れているエイトはブレッドの過去にモヤッとした。
知らず咎めるように後孔を締め上げ、ブレッドは呻き声をあげる。
「どうやら、まだまだ大丈夫なようだな」
エイトの額になだめるキスを落として自身を引き抜く。その瞳には地獄の業火のような熱が込められていた。
「や、抜かないで……」
ブレッドはエイトの懇願には答えず、その身を簡単にひっくり返して四つん這いにし、背中から覆いかぶさった。
「ぅあ、ああぁっ!!あっ…あっ…あっ…あっ」
躊躇なく押し入り、長いストロークの抽挿を容赦なく繰り返す。腰を掴まれ、徐々に速くなるピストン。その激しさに掴んだシーツの皺が無秩序に拡がる。
ぎゅうぎゅうに押し込められたブレッドに腹が突き破られそうだが、恐怖心よりも空洞が満たされる充足感に酔いしれた。
「ああんっ、いい……気持ち、イイよぉ……はぁっん」
めいっぱい埋まっているはずなのに自然と腰が揺れ、更に奥へ奥へと誘導してしまう。腹の中の重量がひときわ増し、エイトと同調するように力強く脈を打ちはじめた。
背後でときに呻くような声をあげるブレッドに、彼も限界が近いことを知る。
「噛んで……お願い……」
掠れる声を絞り出すと両肩を抱きすくめられる。
熱く柔らかいものが首筋をなぞると、次にはブチリ、と皮膚が破けるのを感じた。
「ああああぁぁぁぁああぁっ!」
電流が全身を這い回り、麻痺した細胞の遺伝子を書き換えていく。
(つがい、僕のつがい……これは、もう、僕のものだ)
腹奥に放たれる熱い飛沫を受け止めて、頭の奥で理性が完全に崩壊する音が聞こえた。
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