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鶴姫との出会い
当時の二本松城は山の上に馬蹄の形に築かれていて本丸を取り囲む様に幾つもの曲輪が建ち並んでいた。伊達との血戦を目前に控え、城内は堅固な警備態勢が敷かれ、物々しい雰囲気に包まれていた。
大手門を潜り出迎えた家臣にゆうを二の曲輪に連れて行くよう命じ、義継は本丸へと向かった。その二の曲輪では正室の鶴姫が待ち構えていた。
「いつ伊達の軍勢が攻め込んでくるか分からぬのに・・・おなごのみならず、岩角山の権現様まで連れ帰るとは、困ったお人じゃ」
深いため息を吐きながら、深々と畏まるゆうとゆうにぴたりと寄り添うくろに目をやる鶴姫。
くろはむくっと立ち上がると鶴姫をじっと見詰め返した。
「そなた、名はなんと申す?」
「・・・ゆう、にございます」
「そちの名前は存じておる。隣にいるものの名前じゃ」
「み、すみません。えっと・・・くろに、ございます」」
「そうか」
緊張のあまり声が上擦ったゆうに、鶴姫は屈託のない優しい笑顔を向けた。
「なかなか面白い娘子じゃ。殿の側女より、わらわに仕えぬか」
「すみません、そ、その・・・」
顔を上げたゆうはもじもじしながら鶴姫に目をやった。
「おなごの格好はしていますが・・・」
ようやく状況を飲み込んだのだろう。鶴姫は声を立てて笑い出した。
「すまぬな、てっきりおなごかと思った。そうか、男の雌蕊か・・・で、こそにおるくろがそちの番か・・・」
「御方様」
なぜその事を知っているのか。ゆうが聞き返そうと顔を上げた時だった。二人の男児がどたばたと勢い良く座敷に入ってきたのは。
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