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いざ、小手森城へ
「――――俺の、番になってくれ――――」
長い長い放逐ののち。
くろは、だらりと四肢を垂れ気を失って横たわるゆうの喉元にかぶりと噛み付いた。
その瞬間、眩い光がゆうを包み込んだ。
あぁ・・・これで・・・やっと・・・
くろと番になれた幸せに、ゆうの目からははらはらと涙が溢れた。
くろの腕に抱かれ、微睡みの中ゆうが見た夢は、目を覆いたくなるくらい悲惨なものだった。
輝宗が最期に叫んだ、小手森の亡霊どもの意味をようやく理解したとき、ゆうはあることを決意した。
「俺はお前に言われたから行くんじゃないぞ。同じ仲間を助ける為に行くんだ。ゆうの用事はついでだ」
夜が明け、正気を取り戻したゆうは、はじめてみるくろの本来の姿に目を丸くして驚いた。首筋に残る噛み跡をいとおしそうに撫で、それからすべてを悟った。
そして悲劇の場所へと、小浜城の支城、小手森城へと向けて出立した。
ゆうは、もう一人の雌蕊を助ける為に。
くろは、仲間の犬たちを助ける為に。
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