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難癖ばかりの獣達 13
しばらくすると豹賀が部屋から出てきた。用心深く扉の手前で天井を見上げて、蜘蛛の位置を確認している。蜘蛛は豹賀が入ってからも、その場から動かなかった。
「よし、そのままだな」
口に出して確認し豹賀が右足をそろり、と出し部屋からの脱出を試みる。素早く外に出て、後は扉の鍵をしめるだけ。鍵穴に刺さったままの鍵を捻り抜いた瞬間――ぽとっ……蜘蛛が豹賀の尻尾の上に落ちてきた。
「にぎゃああああ!!」
猫が鳴くような声を出し、大きく口を開けながらブンブンと尻尾を振り回して多田野に突っ込んでくる。多田野は一歩後ずさり、豹賀から逃げようとしたが間に合わず豹賀を受け止めた。
「せ、石冰さん! 落ち着いて!! うぐっ……」
そのまま勢いよく抱きしめられ、多田野は圧迫される。豹賀の身体は細くても筋肉質で力は強い。
(く、ぐるじぃ……)
ギブアップと言わんばかりに豹賀の背中を強く叩いたが離してくれなかった。
「多田野くん! 尻尾! 尻尾に乗った蜘蛛を取ってくれ!!」
「そ、そんなこと言われても石冰さんに抱きつかれていたら見えないし尻尾もブンブン振り回してたら取れません!!」
「僕の、僕の尻尾の上を蜘蛛があああー!」
「落ち着いて下さい!!」
多田野は豹賀に抱き付かれたまま必死に手を伸ばす。蜘蛛を払おうとするが届かない。だが、蜘蛛はちょこちょこと動きまわり多田野の手がギリギリ届く、尻尾の根元まで移動した。
「あっ、ちょっと待って……」
追いかけるように手を伸ばし、ポケットに入れていたボールペンではたき落とそうとすれば豹賀の様子がおかしくなる。
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