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難癖ばかりの獣達 22*
その日の内に戸影部長のデスク前で、自分がΩだということを伝えた。隣には豹賀が立ち、多田野の腰に手を添えている。多田野がΩだと部署で宣言したあと、豹賀は多田野と番になると断言した。
羽衣はびっくりして羽ばたき天井に激突し、気絶した。救急車で運ばれたあと、羽衣から謝罪を受ける。豹賀と抱き合っていたことは熊谷から聞いたらしく、つい口を滑らせてしまったと言う。
Ωに関しての噂は松坂に出所を聞けば、豹賀がαだからΩで惹かれたんじゃないか、という冗談交じりの予想だったらしい。多田野があまりにも長文で返すから冗談と言えなかったと言うのだからいい迷惑だ。
会社では社長の親戚である亀内が社長に進言したらしく何の処分も言い渡されなかった。
そして、多田野は豹賀と同棲を始めた。
***
――三ヶ月後。
「良輝、身体は大丈夫か?」
「もう、それ何回聞くんですか? 豹賀さん。疲れすぎて無理とか今日だけはやめてくださいよ」
「うっ……それは悪かったって」
同棲を始めて数日後、甘えたくなった多田野は何回か豹賀に抱き付いたりと仕掛けるが、仕事が忙しく疲れた豹賀は「寝かせてくれ」の一言だった。
豹賀が帰ってきてはご飯と風呂の準備をする。発情期を迎えるまで、多田野は豹賀にとって都合のいい人ではないかと不安な日々を過ごしていた。だが、突然豹賀はGWにイタリアへ新婚旅行に行こうと多田野を連れ出す。
初めての外国に多田野は胸を馳せた。
行ったことがない外国に高級ホテル。豹賀と多田野が寝転がっても大きいダブルベッド、窓からは夜景が見え、日本語が聞こえてこない世界。
目の前には豹の姿をした人間、喉元を撫でればゴロゴロと甘えるように鳴いた。豹賀にキスをすれば細く伸びた髭がこそばい。でもそれすらも愛おしい。我慢した分だけ、豹賀への思いは強く溢れた。
豹賀の牙が多田野のうなじを噛む。不思議と痛みはなく温かかった。
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