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第10話

「ふうっ…よしっ!」 僕は息をひとつ吐くと、真新しいシューズをキュッと鳴らして一歩を踏み出した。 「え~っと…教室どこだろ?」 他の人に着いて行けば間違いないよね。 そう思って歩いていたけど緊張はどんどんと高まる。 これから僕はこの学校の一員になるんだ。 「ちょっと!」 「あっ、すみません…!」 緊張して周囲をキョロキョロしながら歩いていたせいで、隣の人に軽くぶつかってしまった。 ジロッと睨まれて直ぐに謝ったけどフイッと視線を外されて、その人はそのまま先を行ってしまった。 彼の栗色の髪の毛が窓から差し込む光に煌めいていた。 綺麗…。 僕は思わずその場で立ち尽くしてしまった。 周囲のキラキラ輝くΩに囲まれていると不安が募ってくる。 みんな本当に美人で綺麗な人ばかりだ…。 賢そうだし、何かいい匂いがする。 もしかして何か香水とかつけてるのかな? あと、みんな首輪してる…ってことはヒート経験者ばかりってこと?! どこを見ても首輪をしているΩばかり。 「もしかして僕だけ…?」 この中で僕だけがヒート経験が無いってこと? Ωはヒートの時にαに首筋を噛まれる事によって夫婦である『番』になる。 好きな人が相手ならいいけれど、好きでもない人と無理矢理『番』にならない様に首輪を着けるんだけど…。 首輪はヒートになって医師からの証明書を貰って、初めて購入して付ける事が許可される。 それともうひとつ、番候補に対してαから付ける様に渡されΩも同意した時だ。 ヒート未経験だし、こんな僕を貰ってくれる奇特な番候補のαも居ない。 それを証明するかの様に首輪はしていない。 その事実に改めて愕然とした。 何か特殊な能力があれば良かったなぁ…せめて賢いとか…。 「…」 隣の芝は青いとかいう次元じゃない気がする。 実際に明らかな差が僕とみんなの間にある。 なんだかドヨーンとしたものが胸に溜まっていく。 こんな考えじゃダメなのに。 頑張らなくちゃ、お父さんとお母さんとお兄ちゃんが悲しむ。 入学式もまだなのに、僕は既にヨボヨボになっていた。

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