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第12話
だけど、その人は個室に入る様子はない。
洗面台の前で止まった様で、もしかすると鏡を見に来ただけかもしれない。
式の前に髪型とかチェックしに来たのかも。
そう思いながら僕は水を流すと個室のドアを何も思わずに開けた。
出た先の洗面台の前に思った通り人が立っていた。
えっ?
「うわぁっ!!!?」
僕は声を上げると共に、その場で腰を抜かしそうな程に驚いた。
ドキンドキンと心臓が壊れるかと思うほどに早鐘を打ち、全身から汗がドッと流れ出る。
な、何で…?何でここに…居るの…?
ここはΩ用のトイレじゃないの?
どうして、どうしてΩじゃない人が入ってるの?!
僕はどうしていいか分からず、眉を情けなく垂らしたまま視線を向けていた。
頭は混乱しまくりだし、冷や汗みたいなのが出て、気のせいか心臓の音もさっきより大きくなったような…。
「お前…」
「ひうっ!!」
相手が声を発して、僕はおかしな悲鳴を上げて縮こまった。
そんな僕の声に相手が不快そうに眉間に皺を寄せた。
僕が悲鳴を上げたくなるのも仕方ないんだ。
だって洗面台の前に居たのは、恐ろしい程に顔の整った背の高い…αだったんだから。
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