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第14話

僕はハッとして今度は顔ごと上げて、それから後悔した。 僕より軽く15センチは上から見下ろされたから。 しかも視線が恐ろしい鋭さで突き刺さる。 こ、怖、怖…。 怒られてるわけじゃないけど、整ってるだけで普通に怖い。 緊張感に唇も震えてしまう。 それにしても、どうしてここにαが居るんだろう。 それよりもこの人、誰なんだろう。 Ωでない人間が狭い同じ空間に居るという状況に、僕は怖くなって自分で自分を守る様にさっきよりも縮こまった。 それから少しでも距離を取りたくて一歩ゆっくりと下がった。 それがいけなかったのか、αが腕を組んで眉間に皺を寄せた。 「何で逃げるんだ」 再び声を掛けられたけど、まさか『あなたが怖いからです』とは言えず、僕は静かに唾液を飲むとコクッと頷いた。 「そんなことはまぁいいか。で、ここで何をしてた。入学早々、式をサボるつもりか?」 入学式をサボるなんてつもりは無い。 普通にお手洗いに来ただけだ。 僕は『違う』と首をプルプルと全力で左右に振って否定する。 サボったりルールを破ったりなんてしない。 僕は真面目な学生なんです! それより取り敢えず解放してほしい。 この人と向き合ってるこの時間がしんどいよ。 それに、本当に入学式に間に合わなくなっちゃうから~! それに何だかさっきから冷や汗が、というか凄く体が火照ってきたのは気のせいかな? 息苦しい…早くここから出たい。 「あのっ、僕サボったりしません。ちょっとトイレに行きたくて…」 なんとか声を出して訴えると、αが眉を潜めた。 「トイレって、」 「もう時間無いので…」 「ん?お前…」 「え?」 「ちょっと待て。…まさかな」 ソワソワし始めた僕にαが何か呟きながら近づいてきた。

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