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第15話

えっ、何?!何で近づいてく、 「わあっ!!?」 ビックリして下がった拍子に足元が疎かになってしまった僕の体は後ろへと無防備に倒れていった。 コケる…っ!!! そして転けそうになった僕の視界は不思議な程にスローモーションを生んだ。 目の前のαがちょっと目を見開いた気がしたかと思うと僕の腕を掴んで力強く引き戻してくれた。 ドンッ 次の瞬間、衝撃が起きて思わず目を閉じたけれど思ったほど痛くは無かった。 頬に弾力を感じそっと目を開けると、上から溜め息混じりの声が落ちてきた。 「~っとに、どんくさいヤツだな」 僕を受け止めてくれたのはもちろんαで、まさか助けてくれるなんて思わなくて驚いた。 とにかくお礼を…と思ったらチッと舌打ちまでお見舞いされてしまった。 酷っ…!!って、急に何?! それから、その人は何故かクンクンと匂いを嗅ぎ始める。 僕は恥ずかしさに顔を真っ赤にした。 親はもちろん誰にも、ましてやαにこんな事をされるなんて初めてのことだった。 「な、何っ?!やめてください…っ!!」 慌てふためきながらそう言ったと同時に両肩を軽く押される。 僕はヨロリと体勢を揺らしてαから離れた。 「……気のせいか。ふん…まあいい。始まるぞ、さっさと行け」 「えっ?」 解放してくれるの? 「何をぼーっとしてる。見た目も動きも鈍いのか」 その言葉に僕は思わずムッとした。 初対面なのにその言い方はどうなんだろうか、失礼だと思う。 だけどαからすればΩなんてそんな存在だよね。 「時間ないぞ」 「あ、はい…」 スーツを直しながら言ったαの言葉に頷くと、さっさと逃げようと僕は「すみませんでした。ありがとうございました」とペコリと頭を下げた。 助けて貰ったことは有難いけれど、そもそもこの人がお手洗いに間違って入って来たのがいけないんだし。 取り敢えず理不尽な怖いαじゃなかったことだけは不幸中の幸いだ。 本当に怖いαはΩに平気で暴力を奮うって聞いたことがある。 とにかくもう、これでサヨナラだ! 僕は慌てて入り口近くの洗面台で手を洗いてハンカチで拭くと鏡でチェックを始めたαの方は見ることなく素早くドアに向かった。

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