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第16話
それにしても今、何時だろう?
入学式までもう少し時間はあるけど、一旦教室へ行かなくちゃ…!
遅刻するかもしれない!
そう思うと僕の意識はあっという間にαから離入学式へと切り替わってた。
そして慌てる僕がお手洗いから外に出た瞬間だった。
えっ!?
ドアが閉まる直前に、何故かαが一緒に出てきた。
「おいっ!」
な、何っ?
着いてくるつもりなの?!
まさかこんな僕に目を付けたなんて有り得ない。
ということは、まだ何か言いたいことでもあるのかも?
それか、さっきのことで文句が…?
「待て、うっかり野郎」
うっかり野郎~?
何、やっぱり何か言いたいことがあるんだ。
サァァァァーッと血の気が引く思いで僕が振り返ると、思いの外αの顔が近くにあって驚きと緊張で息が止まった。
「ココ見ろ」
「へっ?」
驚きに目を見開き固まる僕とは対照的に、αが冷静な顔をしたまま指差す。
何だろうかと半分パニックのまま、示された方向に視線をゆっくりとやった。
そこには『トイレ』の文字が書かれた札が廊下の向こうから分かり易いように下がっている。
それを見て僕はお手洗いを見つけて来たんだけど、それとは別にドアの上にもうひとつプレートが貼り付けられていた。
そこをαは示している。
『α職員専用トイレ』
え…α職員専用?
α、職員…職員?
僕はぎこちない動きで視線をプレートから側に立つαへと恐る恐る向ける。
αは示していた指を下ろすと、ふんぞり返る。
片側の手はスーツのポケット。
僕より断然上から見下ろしている。
先、生…だったんだ…。
僕ってば失礼なことを…、
「す、すみませんでした!!」
次の瞬間、僕は全力で頭を下げた。
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