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2.僕の従兄は茶髪で一重のフツメンリーマン(はぁと)②
「お待たせ、柳さん」
玄関に横になってウトウトしていた俺の元へ、麗しの従弟が帰ってくる。
「ふぁっ、あ、皐月くん。大輔は?」
「丁重に、送り出してくるって言ったよね。それより柳さん、ご飯は食べて来たんでしょ? だったらまずはお風呂……一人で入れる?」
「むっ、一端の大人に向かってそれはないだろ? 解かった、入ってくるってば」
「うん、じゃあ僕は、お部屋で待ってるから」
「??? うん?」
皐月くんの言葉に少しだけ疑問を持ったけれど、それよりも俺は、いわれた通りに立ち上がって、ふらふら覚束ない足取りでバスルームへと続く脱衣所に向かったのであった。
「あー、さっぱりした」
シャワーを頭から被って部屋着を纏うと、幾分か酔いが覚めたような気がする。生乾きの肩までの茶髪を頭に被ったタオルで軽く拭きながら、『やっぱり皐月くん、そんなに怒ってなかったナァ』と見当違いに上機嫌に、まだ一階で談笑している両親に挨拶してから二階の自分の部屋の扉を開けた。開けた瞬間呆気に取られて、手に持っていたタオルを床に落とす。ぱさり。
「改めて、お帰りなさい柳さん」
「え、な、ななななななにその格好……!?」
と、俺が動揺するのも無理はない。私服でいると美少女とも見まがうほどの皐月くんが、どうやら新品らしいモノクロのメイド服にカチューシャをつけロングヘアーのウィッグを被り、ニーハイソックスまで穿いて、俺の部屋のラグマットの上に正座して待っていたのだから。ど、どこから見ても女の子だ。可愛い。可愛いぞ。しかもロングヘアーを被ったその姿はどこか、
(皐月くんの、お母さんにそっくりだ……)
思ったのも束の間、妄想が具現化したのかと思った位だ。ピッ、と目の前に本物の叔母さんが現れた。いいや違う、叔母さんの写真が現れたのだ。それはそう、メイド姿の皐月くんの手によって。皐月くんが、俺の机の引き出しの中にあるはずのそれを手にもって、間抜けに突っ立っている俺にそれを突き付けてきたのだ。
「柳さんの夜のオカズって、まさかこれ?」
「どっ、どどどどうしてそれを!? てか、違うよ! 俺、叔母さんのことそんな疚しい目で見たことなんてっ!!」
「だったらなんで、」
メイド姿の皐月くんが粛々と立ち上がって、するりと部屋着の俺の体に纏わり付いてくる。彼の所作一つ一つが、研究でもしたのだろうか、何だかいやらしい。耳元に、背伸びをして囁きかけられる。
「なんで、人の母親の写真、大事に大事に引きだしの中にしまってあるの?」
「そっ、れは……」
「柳さんは、僕というものがありながら、まだ過去の女なんかに惑ってるんだね」
「惑ってるとかそう言うことじゃなくて……ただ皐月くんのお母さんは、俺の初恋の人で、」
と、いう俺は再び、墓穴を掘っている。かっこわらい。キョドキョドと冴えない一重の中の瞳を迷わせて、しかし視線は皐月くんの可愛いメイド姿に最終的に落ち着いてしまう。俺だって男なのだ。目の前に可愛いメイドさんがいたら、思わずその目に捉えたくなるものだ。しかも可愛いメイドさんは、俺を誘惑するようにそのニーハイソックスから垣間見える太ももを、俺の脚の間にスリスリと擦りつけてくるのだ。一端の立派な大人(自称)だというのに、ドキドキする。
「だったら、嬉しいんじゃないの? 僕がこんな服着てたら、母さんにそっくりでしょう」
「それは、た、確かに皐月くん……女の子の服着てたら、叔母さんにそっくりだよ」
こう馬鹿正直なのが俺の悪い癖でもある。そこは否定するべきだった。従弟の女装を前に『嬉しいんじゃないの?』と聞かれて『確かに』と答えるなんて愚か者の極みだ。皐月くんはニンマリ口元をあげて、それから俺の手首をぎゅっと掴んでベッドの方へ誘いこむと、自分が先にベッドに仰向けになって、それから俺を手を引っ張って、自分の上に覆い被さられる。どさっ。これではまるで、女装した可愛い中学生の従弟を、サラリーマンの俺が襲っているような格好だ。気がついたから慌てて退けようとしたけれど、次の瞬間『しぃ』と皐月くんが口元に指を当てて、それから胸元のボタンを乱暴に、ひとつふたつ、みっつ、外して見せた。
「柳さん、僕の言うこと聞いてくれないと、今この場で一階にも聞こえるような大声上げるよ?」
「え゛っ!!?」
「伯父さん伯母さんが駆けつけて、この場を見られたら柳さん、色々終わると思うけどなぁ」
「はっ……、」
確かにそうだ。常日頃俺の両親からも可愛いかわいいされている皐月くんが、乱れたメイド服姿で、俺に押し倒されている格好になっているのだから。この場合、完全に犯人扱いになるのは俺である。両親が俺を警察に突きつけるとは到底考えかねるが、家庭崩壊なども視野に入れないといけない。息を飲んで、深刻気に、妖艶にベッドに転がっている従弟を見下ろす。可愛い。言ってることは脅迫だが、見た目が可愛いことには変わりない。これ、もしかして今日って、俺が上? 皐月くん、俺に、抱かせようとしてるのかな??? 見当違いもいい所に、俺はお花畑の頭でそんなことを考えたが、次には皐月くんに後ろ頭を引っつかまれて、熱く、熱く、口付けられる。性急に、皐月くんの舌が俺の口内に入ってくる。俺が上だというのに、皐月くんが下だというのに、皐月くんはその細い腕のどこからでるのか解からない強い力で俺の後ろ頭を自分に深く押し付ける。
「んっ……ふぅっ!?」
「ふっ、ハハ、んっ……」
時折邪悪な笑いを交えながらも、皐月くんはキスになれない俺を、自分のペースでぐちゃぐちゃに犯していく。皐月くんは、どこで覚えたのかキスまでも上手い。舌でナカをぐちゃぐちゃにされて、唇を何度も啄ばまれて、俺の口元は涎塗れになって腰の力が抜けていく。完全に、というかいつの間にか皐月くんは俺の身体をくるりとひっくり返して、俺の全身をベッドに縫い付けている。両手を恋人繋ぎにしてベッドに押し付けて、顔はもう押さえつけられていないのに俺は中学生のキスに夢中で、舌を絡める皐月くんに答えるように、消極的ではあるが、その口を雛鳥のように開けっぱなしにして舌を空気に突きだしている。暫くそうして弄ばれて、そちらも涎塗れになった皐月くんが口元を拭って天井からの逆光を浴びて上半身を俺の上に跨ったまま起きあげて、クスリと妖艶に笑う。
「口あけっぱで、舌なんか突き出しちゃって……柳さん、やぁらしぃ」
「っ! あっ……も、もう終わった!? 満足した!!? だったら皐月くん、」
「あの男、鏑木さんが柳さんのこんな姿見たら、何ていうかな?」
「だっ、いすけは今、関係ないだろ!!」
「うんv」
俺の『関係ない』発言を皐月くんは甚く気にいったようで、にっこりと天使のように微笑んでくれる。が、しかしその手は俺の短パン中の、核心を這い出していて『ひっ』と俺は高い声をあげてしまった。
「でも柳さんは、キスだけじゃ満足できないみたいだね? 勃ってる」
「それは生理現象でっ……誰だって、皐月くんみたいな可愛い子にキスなんかされたら!」
「僕は、柳さんにしかこんなことしないよ」
「んっ……!」
きゅ、と握りこまれて小さく声をあげる。メイド服姿で、中はどうやら流石に男モノの下着らしい皐月くんが、自分の股間も俺のそこに押し付けてくる。半身を俺の方に倒したかと思えば俺のTシャツを捲り上げて、いとおしげに、俺の慎ましやかにプクリと赤い乳首に、そちらも赤い舌を這わせてきた。すぐにちゅううと吸い上げて、『ひぁ』と声をあげた俺に満足気に、俺がもっと啼くようにと、カリ、とそこに歯を立てるから俺は辛抱たまらなくて、皐月くんに擦りつけられた股間をベッドから浮かせる。『ふふ』と皐月くんの笑い声。
「下も脱ぎましょうね、柳さん?」
「あっ、待って……電気、」
「女の子みたいなこと言わないの。柳さんだって僕のメイド姿、もっと良く見たいでしょ?」
「……うぅ」
否定出来ないのが悔しい。だって本当に、本当に今日の皐月くんはダントツ可愛い。いやらしい。思っている内に短パンと下着を同時に足から抜き取られて、勃起した俺の性器が空気に晒される。同じく皐月くんも下着(やっぱり男モノだった)をニーハイを通して抜き取って、それからひらひらしたスカートを捲りあげて、スカートの中でそちらも奇妙に勃起した、俺より断然立派な性器を見せ付けてきた。
「ほら、柳さん。僕のもこんなに勃起して、早くあなたの中に入りたがってるよ」
「えっ」
「……えっ、って何?」
「あ、いや……なんでも、」
やっぱり勘違いだった。一度でも一瞬でも、皐月くんを抱くのかな、と思った自分が恥ずかしくて、腕で顔を覆ってしまう。しかしすぐにそれは皐月くんに外されて、
「だーめ、柳さん。可愛い顔、もっと見せて」
なんて、全然可愛くなんかないのに口説き文句を言われて顔を赤くしている内、両足を持ち上げられて、勢い良く腰が上がるくらいまで押し上げられる。これでは皐月くんに慣らされた、男になれたアナルまでが丸見えだ。でも声をあげるわけにはいかない。こんなところ両親に見られたら、なんていうか切腹もの?だから。皐月くんはこなれた様子で懐から小袋のローションを取り出して、ピッと片手でそれを開封すると、俺の性器の更に奥、アナルの上の辺りからそれを垂らして、残りを自分の指に絡める。その指で、俺のアナルの入り口を、メイド姿でクニクニと解すようにしてくる。
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