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4.俺の友達は真面目で優しいイケメンリーマン③
「ふっ……?」
ちゅる、と舌を吸われる。大輔、キス、上手い。さすがモテ男。このテクニックで数多の女を虜にしてきたことだろう。間抜けにそんな他所事を考えている内に、冴えない一重がとろんと蕩けて大輔のキスに夢中になる。無意識に、こう言う事に慣れた俺は、覆いかぶさった大輔の頭を抱き返してより深く口付ける。煙草の匂いがする。大輔の手が、女優に感情移入して少し反応した俺の股間をはって、するっと器用に俺のボクサーパンツを脱がしにかかる。ああ、煙草の匂い、煙草の匂いが……?
「ふえっっ!? あっ、ちょっとおい!!?」
「ハハっ、気付くの遅すぎ。東雲、随分俺の、キスに夢中だったみたいだなあ?」
ちゅぱ、と舌と舌が離れたところでやっと気がついて、俺は大輔を押し返そうとしたが良く鍛えた大輔だ。真っ白いモヤシ男の俺だ。全然力が及ばずに、温かい大輔の手の平に、きゅ、とペニスを握りこまれてビクンと腰を浮かせる。『はっv』と息を吐く。大輔は続けてごしゅごしゅと、俺の慎ましやかなペニスを擦り上げだしながら、お喋りする。
「なぁ、俺だって、本当はこんなつもりなかったんだぜ?」
「えっ、や、ひやっv ぁっ、だめっ、手ぇ、だめだってぇv」
「本当は、我慢するつもりだった。なのにお前、無防備すぎるし、誘うようなこと口走るしで……俺もな、お前の友達である前に男なんだ」
「ぁんっっv やぁ、さきっぽぐりぐり、やだっ……」
「なぁ東雲、お前エロすぎんだよ。ほら、カウパー垂らして喜びやがって。そんなに俺に、手コキされんのが嬉しいのか?」
「やっ、やっ、やっ……もっ、お、だいすけ、どうしちゃったんっっだ!!? 汚いだろぉがっっ、」
「さっき風呂入ったばっかだろ。それに、なぁ、お前のここも、さっきからチラチラ見えて気になってた」
「ひんっv」
片手で手コキされたまま、大輔の高い鼻先でバスローブがもっと肌蹴させられて、胸元が露になると大輔に、淡い色の乳首をはむっと咥えられる。そのままコロコロと舌で舐られて、堪らなくて駄目だというのに、友達同士なのに、俺は大輔の頭を掴んでぶんぶんと首を振って快楽に耐える。コリ、と歯を立てられた時、同時にぎゅっとペニスの先っぽに親指を立てられて、俺は、俺は『ぁぐっっ!!?』と声をあげて、あっけなく、大輔のバスローブにその精を放ってしまった。
「っは、はー……、ぁっv やっ、もっ、イったからぁっ」
イったというのに大輔はしつこく、ペニスの裏筋をなぞりながら乳首をちゅううと吸っている。髪を掴んで引っ張るとやっと口と手を離して、いつの間にか俺の上に覆いかぶさっている大輔がセクシーに、バスローブを脱ぎ捨てて、その短髪をかきあげた。『はぁ、は、』と息を乱しながらその光景を眺めていると、大輔の下着越しの股間も、随分押しあがっていることに気がつく。
「だ、いすけ、どうしたんだよ? アダルトビデオに感化、されちゃったのか?」
「そう思いたいなら、そう思っとけ、」
言って俺に軽いキスをして、大輔はベッドの端にあるホテル付属のラブグッズから何かを漁って取り出す。それは皐月くんも良く使う、俺も良く目にするタイプの小袋に入ったローションであった。ローションなんかでどうする気なんだろう? やっぱりここまでされてもお花畑で呑気で、不思議に思っている俺の身体をくるりとうつぶせにさせて、大輔が後ろから、俺の丸出しの尻を上に突きださせた。そこでやっと気がつく。ローションを開封して、俺のアナルにそれを垂らしてきたからやっと気がつく。大輔、俺と、セックスする気だ! まさか? あの大輔が? 女の子にモテモテで、皆の人気者の大輔が、俺を抱こうとしている??? 不可思議な現実で、現実味が無くて、あれ、これ、夢? とさえ思うが、アナルを伝う指の感触は紛れもない本物で、
「だっ、だいすけ……駄目だって、何考えてんだよ!?」
「そう言いながら、お前のケツ、先を期待してヒクついてるぜ」
「なっ!? そんなっ、ことっ……んっv」
つぷんっ。意地悪な大輔の言葉とは裏腹、優しい指が俺のナカに一本だけ入ってくる。慣れている俺だから、昨晩も中学生に抱かれた俺だから、そこは一本の刺激だけじゃ物足りなくて、思わず腰を振ってきゅん、と大輔の指をねっとりと絞めてしまう。
「やぁっv だめ、だめだってばぁv」
「エロい声出しながら、説得力のないこと言うなよ……ふうん、やっぱりお前、チッ、慣れてやがる」
『やっぱり』と言われた事には気付かずに、大輔の指の動きに夢中になる。大輔は指を二本に増やしてくぱ、と拡げて、それからゆっくり優しく、後ろから覆いかぶさった状態で俺の耳元で『もう一本、大丈夫か?』と囁いた。だから俺は、
「あ、あっ、あっv らめっ、だめだっ」
「なんで? あのガキに叱られるってか?」
「うんっ、うんっv さつきくんに、叱られちゃうからっv 皐月くん以外にずぽずぽされたのばれたら、俺、お仕置きされちゃうからぁっv」
「……やっぱりお前ら、デキてんじゃねーか。はっ、でも心配すんな。こんだけ慣れてりゃ、一晩くらい別の男に抱かれたって変わんねえよ」
「はぐっっvv さんぼんっv!?」
「ん、俺の指、しっかり咥えてるぜ、東雲」
きゅうう、と絞める。それが余計に大輔を誘う。どういうつもり、なんてもうどうでも良い。俺はやっぱり、もう、この目の前の友達に抱かれたくて仕方が無くなっている。大輔が俺をどう思っているか。ずっと、ずっとずっとどう思っていたかなんて、お花畑ちゃんの俺にはどうでもいいことなのである。ずぽっ、ずっ、ずっ、ずっvと大輔が指をピストンするから、持ち上げられた腰を振って、頬を枕に押し付ける形でアンアンと喘ぐ。その内ぬぽっと大輔が指を抜いて、『あっ』と名残惜しげな声をあげてしまう。身体を持ち上げて起こされる。腰が立たないからへたっとベッドにへたり込んだ姿勢でいると、今度は大輔がベッドに背を凭れて、下着をやっと脱いで、結構立派で大人な勃起したペニスを俺に見せ付けてくる。我慢したのだろう。そこは先走りに濡れていた。
「ほら、」
「……へ?」
「騎乗位、羨ましかったんだろ」
「ぁ、」
「あんな華奢なガキ相手じゃ、なかなかできないだろ。俺とならいつだって、お前の望む通りにやってやるぜ」
「あ、あっ……でもさつきくんが、」
「どうでもいいだろ、今はもう」
「んっ……v」
引き寄せられてキスされて、そしたらそう、それもそうかと思い始める。ここで今、なぜかは解からないけれど、大輔とセックスしたところで皐月くんが、それを知る余地はないのだ。友達なのに、ずっと仲の良い友達だったのに、セックスしたってもう、関係がどうなったってもう、俺にもどうでも良いことなのだ。
「ほら、跨れよ」
「……うん、」
そろりそろりと腰を上げて、大輔の上に膝立ちになる。促されるまま、どこか切なげな表情の大輔のペニスを片手で後ろ手、支えてはぷちゅ、と良く解れたアナルにキスさせる。腰を、下ろしていく。ゆっくり、ゆっくり。ズル、ず、ズ、と亀頭が入ってキュンっとカリ首を絞めたところで、焦れた大輔が俺の腰をガッと掴んで、
「おらっっ、早く、しろって!!」
「う゛あっっv!?」
ズンッ!!と、一番深くまで、下ろしてきたのであった。性急に、腰を上げ下げ、ピストンが始まる。俺も、一生懸命に腰を振る。
「あ゛っっv あぁっv あv あv」
「くっ……、はぁ、東雲、東雲……いや……柳、」
「ぃあっっ!? なまえっっ、なまえよんじゃぁっvv」
「なんだ? 柳、柳は、名前呼ばれて感じるのか、よっ!!」
「ぐぅっ!? おくっ、ふかぁっ!!?」
腰を振る。いっぱいいっぱい、大輔のペニスを刺激して、いっぱい精液を搾り取るように、沢山沢山腰を振る。ふっと目を合うと、上体を倒して腰を振ったまま、荒々しいキスをする。友達なのに。ただの友達だったのに。ぜんぶ、全部が今日の台風のせいだ。止まった電車のせいだ。そう思いたくて、キスが気持ち良くて、お尻が気持ちよくて、俺は、『ぐっ』と苦しげに声をあげた大輔と、ほとんど一緒に、
「イっっ……くぅv!?」
「はっ、柳っっ!!」
ドピュッッ、ドクンっ、ドプドプっ!! と、ベッドの上で騎乗位で、果てたのであった。
***
あれから何度抱かれただろう。気を失うまで大輔とセックスに溺れて、ラブグッズもほとんど使い果たして、気がついたのは次の日の朝であった。ホテルには窓が無いから、朝日も顔を見せてくれなくて、ただダルく重い腰を摩って上体だけを起きあげて、投げっぱなしのスマホの電源を付けては『ああ、朝だ、』と思い知ったのだ。そして、
「よぉ、目ぇ冷めたか、東雲」
「っっ、だい、すけ……」
仲の良い友達の大輔が、ワイシャツにスーツの下を身に纏った状態で、煙草を吸って丸裸の俺を眺めていた。気まずくて、目を逸らして、泣きそうになる。やってしまった。酔っていたわけでもないのに、いや、よっていたら良いかといったらそれは違うが、とにかくやってしまった。涙目になって、『あの、』と何か良くわからないけれど誤魔化そうとした俺の頭を、整髪料を使っていない朝の、無精髭を生やした大輔がぐり、と撫でてくる(俺の方は限りなく髭が薄いため、口元は今日もサッパリだ)。
「無理させたな、腰、痛いだろ?」
「だ、大輔、俺、俺はお前のこと、」
「解かってるよ、友達だと思ってるんだろ」
「……うん」
「はぁ。あのなぁ、まあ、俺もお前が、あんだけ淫乱に育ってるとは思いもしなかったけどよ」
「いんらんっ!?」
「それでもお前のこと、好きな気持ちは変わらないから。これからガンガン攻めてくぜ、覚悟しとけ」
「好きっっ!!?」
「好きでもない男のこと抱くほど、俺の性観念も崩れちゃいねえんだよ」
「っっ!? な、ななな、」
そう、この日こうして、俺は皐月くん以外の男にまた、告白されてしまったのであった。シャワーも浴びて全部洗い流して、皐月くんには見つからないようにと後ろも綺麗にしたからきっと、きっと皐月くんはこの日のことに気がつかない。そう思っていた時期が、俺にもありました。かっこわらえない。
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