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7.イケメンリーマンとドライブデート&星空×××②
結論から言って、大輔との久しぶりの休日は、ドライブはとても楽しかった。サービスエリアで寄り道して、皐月くんへのお土産を買ったりソフトクリームやフランクフルトを食べたり(フランクフルトを食べる俺を、大輔は妙に熱のこもった視線で眺めていたがそこは流そう)、である。午後二時に自宅を出発してから、俺達はぐだぐだと会社の愚痴なんかを語り合っては良く笑い、日が落ちてきた午後六時にやっと、大輔が言った最終目的地である奥多摩方面へ向かって車を走らせた。
「てか、こんな田舎に何の用なんだよ?」
「お前、高校時代天文部だっていってだだろ。それでもわかんねえのか」
「天文部がなんだって?」
「相変わらず、オツムが愉快なことになってんなぁ、東雲」
「むっ! それ、人のこと馬鹿にしてるだろ」
「ちょっと有名なパーキングがこの先にあるから、そこに車停めるからな」
「ん、了解」
時刻は回って午後八時である。こんなに遠くに来ては帰りが遅くなるな、皐月くんにちょっと連絡でも入れようか。そう思って身体の前に回していた紺のボディバッグからスマホを取りだそうとしたところで、まあまあな数の車がいるパーキングへと辿り付いたようだった。正面から駐車スペースに車の頭を突っ込んで停めると、大輔がギアをパーキングに入れては『外出るぞ』と言ってシートベルトを外しだしたから、助手席の俺も焦ってスマートフォンをボディバッグに仕舞い直す。連絡は後で良いか、と、この時はなんてことなくそう思ったのだった。
車を降りるとそこは、満天の星の下であった。
「うっわ、星! 大輔星空、天の川だ!! えっ、ここ東京!?」
「ギリギリ東京ってとこかな」
車から出た大輔は煙草に火をつけて、夜空の下で子供のようにはしゃいでいる俺を微笑ましげに眺める。煙草の煙が宵闇に白く浮かんでは消え、それを尻目に周りを見ると、カップルや若い学生グループがこの駐車場には多いことに気がつく。
「なあ、ここって結構有名だったりする?」
「いわゆる星空スポットってやつだな。こんなことも、あのガキとは出来ないだろ」
「確かに! 皐月くんまだ中学生だし、俺の両親はこーゆーの興味ないしな! アハハ、きれーだなぁ。写真撮ろうかな!?」
「楽しいか?」
「うんっ。楽しいってか、感動モノだ!」
「そりゃ良かった……にしても、寒いな」
「冬だからな! 大輔分かるか? あっちのがオリオン座だぞ!?」
「元天文部の知識を絞って出てきたのがオリオン座かよ」
「ははっ、満天すぎて星座もぼやけるくらいだなぁ。天の川って東京でも見れたんだ」
言って俺は、スマホを取り出し星空撮影を試みる。大輔の方は撮影なんかはしないようで、ただただ煙草を吸っては俺を眺め、携帯灰皿にそれを押し付け、何本も何本も、何が落ち着かないのか煙草を駄目にしている。星空にひとしきり感動し終わり撮影も終えると、俺は自分の息と大輔の息が白く凍っていることにやっと気がついた。手袋もしていない大輔が、手の平を合わせて摩っている。
「あっ、悪い! もう寒いよな、車戻るか」
「……おう。東雲ちょっと、後部座席に乗れよ」
「なんで?」
「広いから」
「はあ? まあ良いけど……」
促されるまま大輔によって扉が開いた後部座席に乗り込むと、不思議なことに革の座席に大判のタオルが敷いてあった。それがぐしゃぐしゃにならないように気を付けて座って大輔が扉を閉めるのかと見てみると、なぜか大輔も後部座席に乗り込んできて、バタンと扉を閉めては俺と並んで座席に座った(後から思えばこの時に、大輔は扉の開閉ロックをかけたのだ)。エンジンはさっきから付けっぱなしだ。
「……」
「……」
「え、なんだよ大輔」
「俺とお前でしかできないこと、探したって言っただろ?」
「ん?」
「それってな、仲良しこよしのドライブが本題じゃないんだ、東雲」
「え?」
疑問符を浮かべている俺を尻目、狭い車内で大輔が、なにやら不吉にロングコートを脱ぎ始める。脱いだそれを前の座席のヘッドレストに引っ掛けると、大輔は紺の洗練されたセーター姿になって、やっぱり私服でもイケメンだな、と暗い車内で迂闊にぼんやり考えている内、大輔がこちらに身を乗りだしてきた。
「えっ」
疑問も束の間、俺は大輔にキスされたのだ。最初は軽く、驚いて固まっていると次には深く、舌を入れられちゅく、と水音が車内に微かに響く。今日はそんなつもりじゃ! てか、いつもそんなつもりじゃないのに! 思ったが大輔のキスは余りにも洗練されている。俺の体にじんわりとした熱を容易く起こさせて、キスをしながら大輔は、俺のダウンベストをまず脱がしにかかる。キスにとろんと蕩けた一重で大輔を見やると、いつの間にやら大輔の表情は、熱を帯びた雄臭いものに変わっていたからギョッとして、『ちょ、まっ』と今度はシャツのボタンを外している大輔を止めようとする。止めようとしたらまた甘いキスをされて、口ごもって雰囲気に飲まれているとやっと、大輔が熱い声で続きを話し出す。
「あの台風の夜にお前を抱き潰してから、ずっとずっと、お前のことが愛しくて恋しくて仕方なかった」
「んっ……ぷぁ、だ、大輔落ちつけ。ちょっとまっ、」
「次はいつ、どこでお前を抱こうかってずっと考えてた。皐月にはできないこと、それ、カーセックスな」
「かーせっく……!?」
「だからつまり、今日の本題は俺の車で奥多摩で、お前とカーセックスすることだったんだぜ、東雲」
「なっ、ななななな、大輔まさか結局の所そのためだけにっ!?」
「ああ。大型車じゃないと狭くて仕方無いからな、この車にしたんだ」
あの爽やかな大輔が、セックスのためだけにうん百万の車を買ったって? とんだ笑い話だから空笑いをするも、その間にも大輔は、俺のシャツのボタンを全部外し終わったようだ。ぐいんっと上半身を、タオルを敷いた革シートに押し倒されて、すると外気に冷えた大きな掌が俺のペッたんこな胸元を這い出して、『ひゃ』と声をあげた次には乳首をきゅ、と摘ままれる。
「あっv んっ、わ、笑えない冗談、やめっ……」
「冗談じゃないから笑えなくて正解だ。お前のここ、女みてーにぷっくりしてんな」
「んっv んぅっ、や、やだ、やだぁv 大輔っ……乳首弱いから、ぐりぐり、」
「して欲しいって?」
「ぅんっv ひやぁっvv やっ、あ、吸っちゃだめだってぇ、」
大輔も半身を倒して、俺に覆い被さっては乳首に顔を埋めてちゅううと吸い付く。片方は指で、片方は舌で転がして、舐って押し潰して、それから指と唇で挟んで引っ張る。
「やっ、やんっ、おれ、女の子じゃないのにっ……! ちくび、ちくびきもちぃv」
「流されやすさは健在だなぁ、東雲。そんなに俺に、乳首弄られるのが良いのか」
「んっ、んんっ、うんっ、うんっv きもちぃいから、らめなんだってぇvv」
「勃ちそうか? って、いや、もう勃ってんな……」
「ひぁっ、急に握っちゃ!?」
大輔は、口元で乳首を舐りながら、片手でジーンズの前を握りこんでくる。もみもみとしだかれて、『あ、あんっv ふぁv』と自然と大輔の手に腰を擦り付けるように揺らしてしまって、その俺の仕草に、蕩けた表情に、顔を上げた大輔はゴクリと唾を飲み干した。飲み干しついでに俺のジーンズの、チャックを下ろされてプルンと勃ち上がった俺の性器が車の中で丸出しになる。そこはもう、大輔の舌の所業にとろりと先走りを零しており、だから大輔はそれを指にとって、俺の竿に絡めてごしごし擦りあげだす。腰をねじって、座った状態が窮屈だったから、おれは両足を靴のまま、シートに上げて折り曲げる。ああ大輔の新車が汚れる、と考えかけたがタオルが敷いてあるのだ。大丈夫。いや、そんなことを心配している場合じゃないのだが。大輔が、シートに上がった俺の脚を、自分の体の奥側に伸ばしてくれる。ひととき俺を擦っていた手を離したと思ったら、『じれってぇな』と囁いて、後部座席の背もたれを九十度後ろに一気に倒して、フラットな場を作って自分もシートに乗りあがってきた。
「ハハ、ホント狭いよな、車って」
「んぅ、」
そう笑ってはまた口付けて、それから俺は靴を脱がされジーンズと下着もすっぽ抜かれる。大輔の車の中で、外では学生グループが天体観測をしているというのに、俺は肌蹴た冬シャツを引っ掛けただけのほとんど裸になってしまった。ぐいっと片足を持ち上げられて、大輔が俺のアナルに指を伝わせ解しだすから『あっ』と気がついて注意する。
「だっ、大輔! 大事な車が汚れるってば!!」
「ああ? 何のためにタオル敷いてると思ってんだ。それに今日は、ゴムも持ってきてる」
「準備万端かよっ!? って、あ、あぁv お尻ぃv」
「年末俺が仕事に追われてる時も、お前は皐月に抱かれてたんだろうな」
「ひくっv!? やっ、そこ前立腺っっ!! コリコリしにゃいれっっv」
「なぁ東雲、皐月とのセックスは気持ち良いか?」
「あっ、やぁv いじわるっ、やらっ、ぜんりつせんやらっv」
「聞いてんのか、おい?」
答えさせる気があるのかないのか、大輔は遠慮なく俺の体内に埋め込んだ指を、ぐにぐにと曲げて動かし続ける。蕩けて涎が垂れそうになった口元で『ぁっ、あーっv』と喘いで大輔を見つめても、大輔は興奮しているらしくギラギラとした目で俺を捕らえて容赦なんかしてくれない。意地悪な言葉は続く。
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