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2花*

 花喰い鬼に強く抱きしめられた廻が、次に目を開けた時には景色が変わっていた。畳敷きの和室で様々な小物が置いてあった。襖で閉め切られた広い場所で、真ん中には大きいサイズの布団が敷いてあった。廻が混乱していると、花喰い鬼は乱雑に廻を布団の上に押した。 「……っ!」  茨で手首を縛られて動けない廻は、布団の上にぽすんと倒れてしまう。柔らかい布団が衝撃を和らげてくれたおかげか、身体に痛みは無かった。けれど、この状況はかなりまずいのではないかと思った廻は、慌てて起き上ろうとする。それを阻止するかの様に、花喰い鬼が廻の身体の上に乗り上げると、押し倒してきた。廻を見下ろす紅色の瞳は、ぎらぎらと捕食する獣の様にぎらついて、妖しく欲情の炎を灯していた。 「やだっ……!は、離してっ、ください……っ!」 「お前が泣こうが喚こうか、離してやるつもりはない」  やっと捕まえた美味しい獲物を目の前にするかの様に、花喰い鬼は目を細めて自分の唇を舌で舐める。廻は怯えながら懇願する様に口を開くが、花喰い鬼には届きはしない。花喰い鬼は懐から硝子の小瓶を手に取り、蓋を開けた。硝子の小瓶の中には、薄紅色の液体が入っていて薔薇の花びらが浮かんでいた。そうして、硝子の小瓶を廻の唇にあてる。 「飲め」  有無を言わせない強い口調で、鋭い爪が廻の細い首に触れてくる。瞬時に、廻は花喰い鬼に逆らったら殺されると察してしまい、瞳を潤ませながら液体をゆっくりと飲んだ。薔薇の花びらが浮かんだ薄紅色の液体は、砂糖菓子の様にとても甘ったるく薔薇の香りがした。ごくり、ごくりと硝子の小瓶に入った液体を飲み干していく。そんな廻の様子を、花喰い鬼はじっと紅色の瞳で見下ろしていた。全て飲み干すと、じわじわと廻の身体に変化が訪れる。妙に廻の身体に熱が篭っていき、吐く息も艶っぽい。額に汗が滲み、潤んだ瞳からは涙が一筋零れ落ちる。そうして、廻の瑠璃色の瞳から零れた涙が、白薔薇の花びらに変わっていた。廻は自分の身体の変化に戸惑い、大きく目を見開くのと同時に、花喰い鬼が薄く笑い、布団の上に落ちた白い薔薇の花びらをぱくりと食べる。 「ああ、美味いな」  そうして、戸惑い怯える廻の頬をするりと撫でながら、花喰い鬼は残酷に告げる。 「お前は、花喰い鬼の【生贄】の一族の末裔だ。……その証拠に、涙が薔薇の花びらに変わった」 「そ、そんなことって……!」  廻は、まさか自分が花喰い鬼の生贄の末裔だと、今まで知らなかった。家族から一度も聞いた事がなかった。けれども、今思えば、祖母が真剣な表情で「小さな社には近付いてはいけない」と警告していた事が、何よりの証拠だったかもしれない。  目の前にいる花喰い鬼に食べられて、殺される所を想像してしまい、身体を震わせる。そんな怯える廻を見ながら花喰い鬼は、紅色の瞳を細めながら薄く笑む。廻の唇を指でなぞる様に触れる。その刺激だけでも、情欲の火が灯され性感を煽られてしまい廻は「んっ」と甘い声を漏らしてしまう。 「だが、お前を喰い殺したりはしない。……俺の番になってもらう」 「つ、つがい……?」 「ああ、お前にこの言葉は通じないか。……俺の嫁になってもらうとでも言えば分かるか?」 「そ、そんな!?俺、男ですよっ……!」 「性別なんて、俺からしたら些細なものだ」  花喰い鬼が悪い笑みを浮かべると、廻の着ている寝間着にそっと触れる。「邪魔だな」と呟いた瞬間、無遠慮に鋭い爪でびりびりと廻の寝間着を一気に切り裂いていく。 「あっ……!や、やだっ……!」  廻がいやいやと首を横に振って懇願するが、花喰い鬼は止める様子が無い。鋭い爪で廻の寝間着を乱雑に切り裂いていくと、廻の色白の細くて華奢な裸体が浮かび上がる。 「綺麗だ」  目を細めて満足そうに花喰い鬼は薄く笑う。目の前にいるのは鬼ではあるが、端正な顔立ちの男性に、自分の裸体をまじまじと見られた事に対して、廻は羞恥心が沸き上がり顔を真っ赤に染まらせる。 「やっ……み、見ないで……ください……っ」 「……その反応、俺好みでますます好ましいな」  廻は弱弱しい声で瑠璃色の瞳を滲ませながら、ふるふると首を横に振る。その廻の行為が、ただ煽るだけとも知らない。花喰い鬼は情欲に満ちた声音で、廻の耳元で囁くと、べろりと舐め上げた。 「ひゃ、ぅ!」  舐め上げられた箇所が性感を煽られてしまい、廻は嬌声をあげてしまう。花喰い鬼は、廻の耳をべろりと舐め上げてから、白く細い首筋に顔を埋めた。分厚い紅い舌で、廻の首を舐めていく度に、廻は性感を煽られて甘ったるい声が漏れてしまう。そうして、花喰い鬼は廻の首筋に鋭い歯を立てると、かぷりと噛んだ。 「痛っ……!」  廻の潤んだ瑠璃色の瞳からは、白薔薇の花びらが零れ落ちて、廻の細い首からは、紅い血が赤薔薇の花びらに変わり零れ落ちた。血を啜るかの様に、赤薔薇の花びらを食べる様にしながら、花喰い鬼は廻の細い首筋にたくさんの噛み痕を残していく。廻は噛まれて痛いはずなのに、身体は快楽の刺激を拾ってしまい気持ち良さを感じてびくんと跳ねる。痛みが快楽に変換されてしまい、廻は大いに喘いだ。布団の上には、白薔薇の花びらと赤薔薇の花びらが鮮やかに舞った。 「美味いな。……食い殺したいぐらいだ」  興奮した声音で花喰い鬼は廻の耳元に囁くと、廻の平らな胸をするりと撫でる。撫でられるだけでも、廻の身体は情欲の火が灯されてしまい艶っぽい吐息を吐いてしまう。花喰い鬼は、廻の薄紅色の乳首をぎゅっと指でつまんだり、ぐりぐりと押し潰す様にこねくり回していく。乳首を弄られて、くすぐったさからもどかしい感じになっていき、思わず廻は太腿を擦り付けてしまう。そんな廻の様子を見下ろしていた花喰い鬼は、愉し気に笑むと廻の胸元に顔を近付けさせた。そうして、廻の薄紅色の乳首をぱくりと口に含むと、舐めしゃぶったり、ちゅうっと吸い付いたり、甘く噛んだ。 「んっ、ゃあっ!」  端正な顔立ちの男性に乳首を吸い付かれている光景が、あまりにも恥ずかしすぎて廻は顔を真っ赤に染まらせる。薄紅色の液体を飲んだ影響か、乳首に与えられる快楽の刺激が体中を駆け巡り、同年代に比べたら小さい廻の自身がゆるゆると硬くなっていく。花喰い鬼が廻の乳首を強く吸い付いた時に、廻は限界がきて達してしまう。 「ゃ、ぁああああ!!!」  喘ぎ声を上げながら、廻の自身から白濁をまき散らし腹を汚した。ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、廻はゆっくりと呼吸をして息を整えようとする。潤んだ瑠璃色の瞳はとろとろに蕩けきっていて、与えられた快楽の刺激で、頭がふわふわとして追いつかなかった。潤んだ瑠璃色の瞳で花喰い鬼の事を見上げると、興奮したかの様に悪い笑みを浮かべて紅色の瞳で廻を見下ろしていた。 「胸の刺激だけで達するとは、お前は淫乱だな」 「お、おれは……いんらんじゃ……な、い……っ」  乳首だけの刺激で達してしまった事に対して、淫乱だと言われて廻は目を見開いて、いやいやとむずがる様に首を横に振って否定する。花喰い鬼は愉し気に笑いながら、廻の両足を開かせる様にして、色白の片足を持ちあげる。首筋に噛み痕を残した様にしながら、廻の太腿にたくさんの噛み痕を残していく。花喰い鬼に噛まれる度に、痛みよりも快楽の刺激が体中を駆け巡り、廻は嬌声をあげる。  満足するまで足に噛み痕を残していくと、花喰い鬼は廻の開いた両足の間に身体を割り込ませた。性急に着物を寛げると、花喰い鬼の自身を取り出した。廻の痴態を見て育った花喰い鬼の自身は、とても大きくどくどくと脈打っていた。廻は自分のものとは違う大きさに、思わず目を見開いてしまう。同時に端正な顔立ちの男性の自身を見てしまった事に羞恥心が沸いてしまい、思わず目を背けてしまう。目を背けた廻に対して、一瞬、花喰い鬼は目を細めて、気に喰わなかったのか廻の顎を持って固定する。そうして、欲情したぎらついた紅色の瞳をして悪い笑みを浮かべながら、廻に残酷に告げた。 「お前のここに、俺の全てを受け入れてもらう」 「やっ……そ、んな、大きいの、はいらない……っ!」  花喰い鬼は廻の後孔に、花喰い鬼の自身をすりすりと擦り付ける。指で廻の後孔の淵になぞる様に触れる。廻の後孔は、解されていないのにも関わらず、最初に飲んだ薄紅色の液体の影響か、くぱぁと物欲しそうに開いていて、とろとろに蕩けて柔らかくなっていた。羞恥心と怯えから震える廻に対して、花喰い鬼は残虐な笑みを浮かべる。そうして、廻の腰を強く掴んで逃げられない様にすると、花喰い鬼は廻の後孔に花喰い鬼の自身を一気に突き入れた。 「ゃ、ぁああああああ!!!」  廻の口からは悲鳴にも似た嬌声がひっきりなしに漏れ出てしまう。ずぷずぷと熱の塊を一気に廻の体内に挿入されて、その衝撃に目を見開いて白薔薇の花びらを零した。廻の体内は花喰い鬼の自身を歓迎するかのように、やわやわと締め付けて美味しそうに飲みこんでいく。 「……っ、お前と繋がる時を、どれほど待ったことか」  花喰い鬼は、興奮した声音で獣の様にぎらついた紅色の瞳で、廻の腹を愛しそうに撫でる。そうして、唇を舐めながら花喰い鬼は廻の首筋に顔を埋めて噛みながら、律動を開始した。最初から気遣いが無いに等しい激しい律動で、ぱんぱんと肌と肌がぶつかり合う卑猥な音が和室に響き渡る。 「ひ、っ!ゃぁあっ!や、だっ!やめ、て……っ!」  与えられる快楽が強すぎるせいか、廻の瞳からはぽろぽろと白薔薇の花びらが零れ落ちて、布団の上に舞っていく。花喰い鬼は廻の首筋に顔を埋めながら、噛んでは分厚い舌でべろりと舐め上げて、廻の奥を突いていく。愛おしそうに廻の身体を花喰い鬼は味わいながら、廻の弱点を責め立てていく。ぐじゅぐじゅと廻の前立腺を刺激される度に、廻の喉からは甘い喘ぎ声が出てくる。気が付いたら、いつしか廻の腰も花喰い鬼の律動に合わせるかの様に淫らに動いていた。 「お前の中は、温かくて気持ち良い……っ」  花喰い鬼が興奮した声音で呟くと、廻の自身に手を伸ばした。廻の自身に触れると包み込む様にして、揉んで扱いていく。 「ひ、ゃあ、……んぁ……!」 「……っ」  突然、与えられた快楽の刺激に廻は喘いでしまい、ぎゅっと花喰い鬼の自身を締め付けてしまう。ぐちゅぐちゅと廻の前立腺を刺激して奥を突きながら、花喰い鬼はそろそろ限界が近い廻の耳元で残酷に囁いた。 「イけ」  花喰い鬼は廻の自身を強く扱きながら、廻の最奥を抉る様に突いた瞬間、快楽の刺激に耐え切れなかった廻は悲鳴にも似た喘ぎ声をあげる。 「んああああああああ!!!」  そうして、廻の自身からは白濁が撒き散らされて腹を汚していく。廻の体内は花喰い鬼の自身をきゅうきゅうと搾り取る様に締め付けてくるので、そのまま精液を中に吐き出されてしまった。どくり、どくりと花喰い鬼の熱い飛沫を体内で感じ取りながら、女みたいに抱かれて中に出されてしまった事に、この行為に対して気持ち良く感じてしまった事に、廻は戸惑いながらも、白薔薇の花びらを零しながら喘いだ。ぽろぽろと白薔薇の花びらを零す廻の瑠璃色の瞳に、花喰い鬼は口付けを落としながら、白薔薇の花びらをむしゃりと食べる。その花喰い鬼の浮かべる笑みは、どこまでも妖しく綺麗で残酷だった。 「……これで、終わりだと思うな」  花喰い鬼は廻の耳元に囁きながらぺろりと舐め上げると、廻の体内に挿入っていた花喰い鬼の自身が、次第に硬さを取り戻して大きくなっていくのを感じて、廻は絶望に目を見開いた。 「ゃあっ……!ま、まってくださ……っ!」 「まだまだ付き合ってもらうからな、廻」 「ひ、ゃあああああああ!!!」  廻の懇願は聞き入れられず、紅色の目を細めながら花喰い鬼は、廻の華奢な身体を、たっぷりと、じっくりと、ゆっくりと味わうかの様に何度も揺さぶりながら貪り尽しては、廻の体内に欲を吐き出し続けた。廻は気絶する事も許されずに、快楽に支配された身体で甘ったるい声で喘ぎ続けた。 「お前が泣こうが喚こうが、逃がしてやるつもりはない」  廻の意識が途切れる前に聞いたのは、花喰い鬼の愛憎の篭った言葉だった。 (どうして……?)  疑問を抱きながらも限界がきた廻は、花喰い鬼に抱かれながら眠りに落ちる。花喰い鬼が満足するまで、廻は何度も暴かれて、貪られて、抱かれたのだった。布団の上には、白薔薇の花びらと赤薔薇の花びらが艶やかに舞い落ちた。気絶した廻を眺めながら、花喰い鬼は愛おしそうに抱き寄せ、優しい手つきで撫でていた事を廻は知る由もない。

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