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4.『金桜の宴』
この世を呑み込みそうな大きな満月に彩られ
毎年美しく妖艶に咲き誇る桜たち。
目の前にある景色はまるで常世だ。
穢れも不浄も覆い隠していつの間にか時が過ぎる。
「咲けよ咲けよと言うが人間は無関心だなぁ」
桜よ咲け。と言うだけで一番美しい時間には訪れない。
「いいじゃねぇか。旨い酒と美しい桜と満月。
こんなに粋な場所を無粋な人間に荒らされることはねぇさ」
屈強な男が笑う。
どこか土の匂いがする男は手酌で酒をあおる。
「……そうだな。それでもあと数十、数百年の内に荒らされるのさ」
どこか水の匂いがする細い目の優男が徳利を傾ける。
趣の違う男二人は桜の舞を見ながら笑いあう。
「そうか。じゃあ幾数世かけてやっと整ったこの場所も終いになるのか」
「さてね。人はどうするかわからないものだから」
目の前も空にも広がる桜は風と共に舞っている。
幻想的な世界に男二人。
盃になみなみ注いだ酒を楽しむ。
満月と桜に呑み込まれそうだ。
誰かが笑った。
題名【金桜の宴】
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