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10.『サクラ、ひらり』

ここに来るのは20年振り。 もう廃校になった母校。桜が綺麗な学校で桜が咲くと町の人達は日曜日なんかに花見をしていた。小さい町だったから過疎化が進んで誰も彼もが土地を離れていって、自分の家族も卒業と共に離れた。その卒業式の時に幼馴染の咲也とタイムカプセルを埋めた。20年後ここに来て開けようと。どんな大人になるか楽しみだなとか言って。 その約束を彼が覚えていたから知らないけれど2年前に事故で彼は亡くなってしまった。ある日の夕方のニュースで知った。結構大きな事故で被害者の名前の中に彼の名前があった。呆然とニュースを見ていた記憶だけがある。 彼は来ないのにここにいる。 桜も健在で当時を思い出させるように咲き誇る。 持ってきたシャベルで桜の根元近くを掘る。しばらくすると箱が出てきた。 箱をみると当時の思い出も一緒に溢れて少ししんみりしてしまった。 箱の中身は互いに秘密で。彼が何を入れているのか知らない。 箱を開けるとさらに箱。1つが自分のでもう1つが彼が入れたもの。勝手に見るのは悪い気がするが咲也が入れた箱を手に取り中身みる。 そこには『晃介へ』と書かれた手紙が入っていた。 何が書かれているのだろうと焦る気持ちを押さえて封を切る。 中身は便箋1枚。 広げると「好きだ」とだけ書いてあった。 その文字が一瞬にして涙で見えなくなってしまった。 「おれも……」 彼には届かない言葉が桜の花びらとともに舞う。

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