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11.『噂の君と高嶺の花』

鷹宮薊(たかみやあざみ)は今日も学校へ向かうため自転車で河川敷を走っている。 すると突然目の前に人が飛び込んできた。 危うく事故りそうになったがなんとか止まり視線を上げると「鷹宮薊(たかみやあざみ)先輩っ!先輩の全てが好きです!」 満開の桜の木の下でそう言われ、正直戸惑った。 「……無理。」 「そんなこと言わないでくださいよぉ!」 妙になつっこく犬みたいなヤツ。名前は鈴成紡(すずなりつむぎ)。 あれから月日は流れ…。 「薊せんぱぁいっ!」 グラウンドから声のする教室の方を見上げる。 「紡?」 見れば紡が大きく手を振りながらビニール袋を窓の外に投げ出し手をつっこんで何かしている。 薊は首を捻りながら教室の方へ歩み寄った。 「先輩、卒業おめでとうっす!」 目の前にピンク色の花びらが舞い降りた。 視界は徐々にピンク度を増し、あの日の満開の桜の木の下に居るかのような感覚になった。 「薊先輩が大好きだぁっ!」そう叫びながら止まることなく花びらを撒き続ける紡の気持ちはあの日と変わらないでいてくれた。 薊の心に染み渡るように紡の言葉は広がっていく。 「ばっかじゃねーの。」の言葉には嫌味はなく、意識とは関係なく頬に涙が伝っていた。

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